男子100メートルは昨年のインターハイ6位の鶴巻陽太(三条3年)が10秒51で優勝した。準決勝では昨年のインターハイ覇者・関口裕太(18=早大1年、東京学館新潟出)が持つ10秒37の新潟県高校記録を0秒01縮める10秒36をマーク。左殿筋に炎症を抱えながらのレースだったが、決勝でも準決勝に続き、89年の大会記録10秒60を上回るタイムをたたき出した。

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中盤からグィッと加速する。持ち前の走りを鶴巻は決勝でも披露した。全身に無駄な力も入っていない。タイムは10秒51。34年前の89年から不動だった大会記録10秒60を1日に2度上回った。「一番いい状態からは80%」とあとから付け加えたものの、「出せる力の100%を出せた」。冷静な口調で決勝を振り返り、歓喜の爆発もなかった。

準決勝ですでに喜びは味わっていた。1・9メートルの追い風に背中を押されて10秒36の県高校新記録を樹立。4レーンを走る鶴巻は右横8レーンのライバル岩舩遙信(新潟明訓3年)の動きを確認するとゴール前10メートルでスピードを緩めた。両拳を作って笑顔を見せたが、実は複雑な心境でもあった。「後悔はある。もっと、ちゃんと走っていれば…」。しかし後半を流した判断を正解だとも思っていた。「これ以上力を出すと決勝へダメージが残る」。2つの思いが交錯した県高校記録更新だった。

23日のスタート練習中に左殿筋を痛めた。腫れに痛みが重なり、この日朝には痛み止めの薬を1錠飲んでレースに臨んでいた。冬場にエアロバイクの荷重を調整しながらこぎ、筋肉の爆発力と持久力を身につけてきた。「北信越に行けるか心配だった」と故障が原因で冬季練習の成果を出せるかどうか、不安を抱えながらのレース。しかし、新記録と優勝の2つを手にした。「インターハイは優勝を目指す。北信越、インターハイと右肩上がりにタイムを縮めていきたい」。故障に打ち勝った鶴巻の次の目標タイムは県記録(10秒25)を視野に入れる10秒20台だった。【涌井幹雄】