陸上男子400メートル障害の黒川和樹(22=法大)が子どもたちからのエールを力に変え、パリオリンピック(五輪)へ突き進む。

25日、東京・葛飾区の葛飾ろう学校で、来秋に東京で開催される陸上の世界選手権とデフリンピックへ向けた「TOKYO FORWARD 2025 アスリート交流イベント for KIDS」に参加。08年北京五輪400メートルリレー銀メダルの朝原宣治さん、デフ陸上女子の岡田海緒(みお)、東京デフリンピック応援アンバサダーの川俣郁美さんとともに、小学生28人(ろう者は13人)と手話での交流やリレーなどで汗を流した。

「身ぶりだったり、ジェスチャーだったり、どう伝えるのがよいのかを考えることがすごく楽しかったです」。会の終了後には写真撮影やサインも求める列ができ、「陸上に興味を持ってくれていたことがすごくうれしかったです。今日はいろいろな感情が湧きました。いいなぁという気持ちになりました」としみじみと振り返った。

昨夏の世界選手権では自己ベストとなる48秒58をマークし、パリ五輪の参加標準記録(48秒70)を突破。今年6月の日本選手権で好成績を残すか、世界ランキングで上位に入れば、2大会連続の五輪代表が決まる。

昨年は国際舞台で躍動したシーズンだったが、10月のかごしま国体では左足首を骨折。「110メートル障害の予選の8台目でした」。靱帯(じんたい)に影響はなかったが、その後は約2カ月を完全休養にあてた。

現在は「完全に動けている状態ではない」というが、「標準を切っていることもあって、全然焦っていないです。こんなに焦っていなくて大丈夫なのかっていうくらい焦っていないです」と冷静に新シーズンへ調整中。「6、7、8月に向けて自分のレースパターンをつくっていければ」と思い描く。

4月からは住友電工に入社する。今後も法大を拠点にするとし、4月にはシーズン初戦に臨む予定。パリ五輪では同種目で日本人初の決勝進出を狙う。

「日本記録(47秒89)を更新するようなレースをしたい。思い描いているイメージはできているので、あとはそれができるかどうか」

自らに言い聞かせるように誓った。【藤塚大輔】