<高校総体:みちのく発>

 開催4県、会期24日間に及んだ高校スポーツの祭典が終わった。スローガンは「北の空

 君に無限の可能性」だったが、もう1つのキーワードは「復興」だった。7月27日、総合開会式に先立って秋田市で行われたサッカーの開会式は黙とうで始まった。最終日、盛岡市での競泳閉会式も「復興をお祈りします」のあいさつで終わった。

 震災直後は、開催自体も危ぶまれた。宮古市の一部競技は場所を変えたが、その他の会場も万全ではなかった。盛岡総合プールは被害が少なかったが、天井まで壊れた選手控え場所のアイスアリーナの補修は7月末までかかった。岩手県高体連水泳委員長の佐々木靖史氏(41)は「本当にできるか不安だった。でも、やってよかった」と話した。

 「被災地に元気を」といわれ続けるが、実は被災地は元気だ。もちろん、つらい思いをし、大変な経験をして、体も心もボロボロなのだろう。でも、多くの人は前向きに、元気に、復興を目指している。高田高卓球部の金野主将は「授業もないから、練習時間はたっぷりでした」と笑った。そして「被災地の、を抜きにして一高校生として戦いたい」とも言った。その強い言葉に胸が熱くなった。

 震災と切り離せない大会を通して伝えたかったのは「被災地の悲惨さ」ではなく「被災地は元気」の方だった。復興への道のりは険しい。しかし、確実に前に進んでいることは、この高校総体でも分かった。【荻島弘一】