康生新監督が「日本柔道」を進化させる!

 グランドスラム東京(30日開幕、東京・代々木第1)に向けた男女日本代表合宿が28日、東京・講道館で行われた。国内の国際大会で初めて指揮を執る男子の井上康生監督(34)は、ロシアのサンボなど世界各国の格闘技に興味を示し、その技術を積極的に取り入れていくことを明言。「世界柔道」の潮流を見極め、日本柔道を押し上げる。

 井上監督の口から、次々と「格闘技」の名前が出てきた。その言葉は流ちょうで、よどみがなかった。柔道家なのに…いや、柔道家だから造詣が深いのか。ロシアの「サンボ」や「ブラジリアン柔術」に始まり「モンゴル相撲」にグルジアの「チタオバ」。果てはウズベキスタンの「クラッシュ」やインドの「カラリパヤット」まで。各国の“国技”を挙げて熱く語った。

 「ブラジル選手の寝技の技術は高い。私もブラジリアン柔術の寝技の王者とやって、柔道に生かせると思いました。モンゴル選手も、組み合った状況で始めるモンゴル相撲を試合前にしていて、ギリギリで粘れる体幹や足腰の強さが生かされている。柔道と結びつけて取り入れるべきところは、積極的にするべき」

 日本代表の指導者が、柔道以外の技術“導入”を示唆するのは極めて異例だ。柔道は日本古来の武道。世界が組まないパワー柔道に変化しても、日本は今まで、しっかり組んで一本取る従来の柔道をかたくなに守った。格闘技化する世界の潮流にはくみしなかった。

 新監督も“一本”を追い求めることにブレはない。「全日本にとって、良き柔道を世界に見せていくことは1つの使命」とも言う。ただ、それで勝てなくても良しとする言い訳は受け入れられない。「世界の柔道の中身を見たとき(各国の)格闘技を取り入れてつくられているのも確か。そういったものに目を向けていくことも大事」と言う。

 「JUDO」に負けぬ、進化した「日本柔道」へ。国内で初めて指揮を執る新監督の目は、ずっと先を見据えていた。【今村健人】