5大会ぶりの優勝を目指す桐蔭学園(神奈川)が、石見智翠館(島根)に46-31と快勝し、2年ぶりの決勝へ駒を進めた。前半18分にロック石井洋介(3年)が相手6人を吹っ飛ばしてトライを奪うなど、持ち前の破壊力で7トライ。初の単独優勝に王手をかけた。11日の決勝(午後2時開始)は2大会前と同じ顔合わせとなった。

 石井の「猛獣トライ」が桐蔭学園に流れをもたらした。前半18分、ラックからボールを左に持ち出し、2人を同時に振り払う。続けざまに3人目を手で突き返すと、前後から詰め寄られても倒れない。「ここで倒れたら流れ持っていかれる」と強引に押し切る。計6人のタックルをはねのけ20メートル、力ずくの突進だった。

 今大会初めて先制を許し、なかなか主導権を握れなかった。だが試合中に「バックサイドが空いてるから狙っていこう」と弱点を見いだし修正すると、確実にトライを重ねた。藤原監督は「ああいうところできっちりやってくれるのが3年生。(石井の)あのプレーは大きい」と評価した。

 石井は2年だった昨季の悔しさをバネに成長した。県大会決勝の慶応戦で、開始15分でタックルした際に左肩を脱臼して退場。チームも敗れ10年連続の花園切符を逃し「つらかった」。復帰するまでの6カ月間、タイヤ引きやスクワットなど下半身を重点的に鍛えた。体重は8キロ増、ラグビーパンツはLからXOサイズまで上がり、高校日本代表候補に名を連ねた。

 東海大仰星に敗れた2年前の決勝はスタンド応援。2学年上の兄大介は途中出場した。石井は「兄とやっと同じ舞台に立てて、超えるチャンスをもらった」。大会前に「頑張れよ」とLINEでエールを送られ、ヘッドキャップも託された。「全国制覇してこそ思いを晴らせる」と意気込む。FWが前に出てBKで展開していくチームスタイルにあって、石井はFW随一の3トライで貢献。それでも「もっとFWとして前に出られる」と貪欲だ。

 準決勝は交代枠8枚を使い切り、余力を持って決勝へ。OBの思いも背負ってのリベンジマッチが待つ。2年前も出場したSH斎藤直人主将(3年)は「まったく余裕なく、いっぱいいっぱいだった。悔しさしかない」と思い返す。今季は「新しい伝統を作ろう」を合言葉に鍛錬した。「(相手は)どこからでも点を取れるチームなので、走って走って走り勝ちたい」(同主将)。5年前は両校優勝。初の単独制覇へあと1歩と迫った。【青木沙耶香】

 ◆石井洋介(いしい・ようすけ)1997年(平9)8月18日、横浜市生まれ。桐蔭学園で2年秋からロックのレギュラー。高校日本代表候補で、今春から明大に進学予定。目標とする選手は兄の石井大介(関学大)。家族は両親と兄、妹。183センチ、96キロ。

 ◆13年度決勝VTR Aシード同士の東海大仰星と桐蔭学園の対決。前半は7-7で折り返したが、後半1トライ上回った東海大仰星が19-14で、7大会ぶり3度目の優勝。桐蔭学園は東福岡との両校優勝以来3大会ぶり2度目の優勝はならなかった。これで花園での対戦成績は東海大仰星2勝1敗。