【北京=松本航】女子でショートプログラム(SP)2位の樋口新葉(わかば、16=東京・日本橋女学館高)がフリーも2位の141・99点を記録し、合計212・52点で2位に入った。優勝のザギトワ(ロシア)に1・36点及ばなかったが、3位だった第1戦ロシア杯と合わせて、初めてのGPファイナル(12月、名古屋)出場へ前進。SP7位の三原舞依(シスメックス)が合計206・07点で4位、SP6位の本田真凜(大阪・関大高)は合計198・32点で5位となった。

 映画007の「スカイフォール」にとけ込み、主人公ジェームズ・ボンドならぬ「ワカバ・ボンド」が体育館内の熱気を吸い寄せた。ガッツポーズで演技を締めた樋口に「男子やペアを目当てにチケットが売り切れた」(中国メディア)という観衆は総立ちだ。自身3度目の210点超え(国別対抗戦を含む)で「とりあえず練習してきたことは全て出し切れた」と封印してきた笑みがはじけた。

 前日のSP後は「気は抜けない」と一貫して真剣な表情。この日もライバルの動きは視界から消した。直前のザギトワが高得点を記録しても「全く気にしていなかった」と動じずにリンクに立った。序盤のルッツ-トーループの連続3回転など7つのジャンプを全て決め、持ち味のスピード感で小さくならずに攻めた。

 氷上を離れると、樋口の武器は顕著に表れる。50メートル走は文部科学省の新体力テストにおける10点満点の7秒7(12~19歳女子)を大きく上回る7秒1。鬼ごっこでは「だいたい逃げ切れる」と絶対の自信を持つ。その身体能力の高さで「何も意識しないでジャンプを跳べていた」と振り返るスケート人生だが、昨季は跳んだ瞬間に空中でほどける「パンク」に苦しんだ。

 昨年12月の全日本選手権では堂々の2位。だが、9位だった今年2月の4大陸選手権で自信は消えた。直後からトレーナーをつけ、ケーキ、揚げ物など好きな食べ物を節制。増減が激しかった体重は安定し「練習の質が上がった」と失敗しない安定感を新たに得た。

 目標とするGPファイナルへのポイントは、今回の2位で合計24点。直近2シーズンの進出ラインに乗ったが、GP初優勝にわずかに届かず「ステップでのレベルの取りこぼしがなかったら…。本当に悔しい」と唇をかんだ。「まだファイナルに出られるかは分からないけれど、もう少し追い込んだ練習をしたい」。最高の準備で吉報を待つ。