男子500メートルで10年バンクーバー五輪銅メダリストの加藤条治(32=博慈会)が34秒683で3位に入り、平昌五輪代表入りを確実とした。14年ソチ五輪後は両膝のけがに苦しんできたが、経験を生かし、勝負の年にしっかりと復活。4大会連続となる五輪で悲願の金メダル獲得を誓った。男子8人、女子10人が上限の代表は最終日の30日に正式発表される。

 日本スケート界を引っ張ってきた男の意地と経験が、ここ一番で生きた。3位以内を逃せば五輪への道が閉ざされる難しいレース。加藤は最初の4歩に神経を集中させていた。「絶対に頑張らない」。力まないことを意識した、ふわりとしたスタート。それが作戦だった。「レース前に昔そうやっていたと、ふと思い出した。怖かったが、長い経験の中で実証してきたことを信じようと思った」。

 100メートルを全体1位タイの9秒49で通過し、得意のカーブで一気に加速した。力を出し切り、ふらつきながらゴール。タイムを確認すると、何度も拳を握った。「今日は何もしていない。今まで頑張ってきた自分が結果を出してくれた」。充実感と安堵(あんど)感が表情にあふれ出た。

 5位に終わった14年ソチ五輪後、1年間の休養を経て復帰も、その後は両膝のけがに苦しんだ。練習が出来ない日々が続く中、今年3月には14年間在籍した所属先を退社した。「自分を追い込んで、奮い立たせたかった」。膝の痛み、年齢からくる体の変化と付き合いながらも、気持ちはしっかりと前を向いていた。「ここ一発」。今大会に照準を合わせ、しっかりと滑りを作り上げてきた。

 高校生から世界の舞台に飛び出し、日本記録、世界記録を作った。五輪でメダルも取った。残されたのは五輪の金メダルのみ。「諦めずに突き進んでいけば、道は開けると思う」。32歳になった天才スケーターが、再び夢に挑戦する権利を手に入れた。【奥山将志】

 ◆平昌五輪代表選考 代表は男子8人、女子10人が上限で、11~12月に行われたW杯4大会の結果で女子の小平が500メートルと1000メートル、高木美が1500メートルで今大会の出場を条件に内定している。残る代表枠のうち男女とも団体追い抜きの3人を実績や合宿での力量を基に強化部首脳がまず選考する。残りの枠が個人種目の選考会上位選手に割り振られる。