【ダラス(米テキサス州)23日(日本時間24日)=奥岡幹浩】新たな歴史が刻まれた! ウィザーズの八村塁(21)が、NBAデビュー戦であいさつ代わりの「ダブルダブル」を記録した。

日本人として初めてNBAの開幕戦に先発出場し、敵地でマーベリックスから14得点、10リバウンドの活躍。ウィザーズの新人が開幕戦で「ダブルダブル・デビュー」を果たしたのは、94年ジュワン・ハワード以来25年ぶりの快挙となった。

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夢の舞台に初めて立っているとは思えないような、堂々としたプレーを披露した。八村がデビュー戦でいきなり活躍。14得点、10リバウンドで、主要個人記録の5項目中、2項目で2桁を記録する「ダブルダブル」を日本人として初めてマーク。チームは敗れて手放しで喜ぶことはなかったが、「そこそこの仕事ができたのではと思っている」。その表情には、NBAプレーヤーとしての自信と手応えがにじんだ。

NBAでの最初の得点は、開始から約2分半ほどで記録した。第1クオーター(Q)残り9分24秒。チームの中心選手ビールからのパスを左サイドで受け、すかさずゴール下に突進。防御をはねのけるかのように左手で力強くシュートを決め、「ブラッドがいいパスしてくれたし、ゴールも空いていた」。簡単なプレーではなかったはずだが、事もなげに振り返った。

第3Q終了時点で12得点、8リバウンド。それぞれ日本人NBA選手としての1試合最多記録(渡辺雄太=10得点、5リバウンド)を早くも更新する中、最終Qの残り3分を切って再びコートに戻ると、立て続けにリバウンドを2つ奪い「ダブルダブル」に到達した。

これをマークするには、異なる複数の役割を一定の水準で果たす必要がある。ウィザーズの新人が「ダブルダブル」を開幕戦で記録したのは、まだ名称がワシントン・ブレッツだった94年のジュワン・ハワード以来、実に25年ぶりの快挙。さらにいえば、あのマイケル・ジョーダン(ブルズ)やレブロン・ジェームズ(キャバリアーズ)といった名選手たちもデビュー戦では逃した。

快記録の原動力となったのが、大舞台でも物おじしない強心臓だ。開幕前日から当日の試合前にかけて、報道陣から心境を尋ねられるたびに「楽しみ」と繰り返した一方で、「緊張する」という言葉は一切なかった。

試合後にそのことを聞かれると、「実際にあまり緊張していなかった。プレシーズンマッチも経験していたし、練習でやっている通りに試合に入れた」とけろり。シーズン2戦目は25日(日本時間26日)のサンダー戦。怖いもの知らずのルーキーがどんどん大きく成長していけば、日本バスケットボール史のみならず、やがて世界最高峰のリーグに名を刻む存在にもなりうる。

◆八村塁(はちむら・るい)1998年(平10)2月8日、富山市生まれ。ベナン人の父と日本人の母を持つ。小2から最初に始めたのは野球で強肩捕手だった。一緒にやっていた陸上は小5で全国大会に出場した。富山・奥田中時代にバスケットボールを始め、宮城・明成高時代には1年時からレギュラーで出場し、ウィンターカップ3連覇。卒業後、米ゴンザガ大へ進学。4人きょうだいの長男で、2学年下の弟阿蓮は東海大2年、妹安美菜は明成学園高(東京)3年で、ともにバスケットボール部所属。日本代表の馬場雄大は奥田中学校の2学年上の先輩。203センチ、104キロ、血液型A。