自然の海や湖を泳ぐオープンウオーター(OWS)のU-19日本代表、蝦名愛梨(18)が24年パリオリンピック(五輪)を目標に北海道外で羽ばたく。女子では道内唯一の競技者として種目採用となった16年から国体に4年連続出場。1月には国際大会初出場となった全豪選手権女子5キロ19歳の部で3位に入った。今春進学した名門・日体大での練習は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、まだ実現していないが新天地での飛躍を心待ちにしている。

18歳の蝦名の胸には先駆者になる決意が刻まれている。OWSに取り組んで5年。新型コロナウイルスの影響で日体大合流は5月以降に延期になったが、故郷・帯広市内のプールで黙々と練習を積んでいる。目標は明確。「パリ五輪に出るために大学で4年間やっていく。北海道でやっている選手は少ないので、これから結果を出して皆さんに(競技を)知ってもらえるように努力したい」。色紙に「パリ五輪出場!!」と力強く書き、飛躍を期した。

海や湖、川など自然を舞台に5キロや10キロなどの長距離を泳ぐ。「自然空間で好きなところまで泳げるし、人との接触もある。競える感覚が強い」。2歳半で水泳を初めて、競泳では中長距離が専門。所属する十勝スイミングクラブの小椋達也コーチの誘いを受け、中2でOWSに取り組み始めたころは「めちゃめちゃ冷たかった」と水温の低さに驚きもあった。だが同時に「初めては何でも楽しい」と持ち前の好奇心が向上心を生んだ。

競泳の愛好会しかなかった帯広大谷時代は総体3年連続出場の長距離自由形と並行して、所属クラブで「顔上げ」などOWSに関わる練習をしてきた。ブイを目印に泳ぐため波のある水面から頭を高く上げる必要がある。大会出場を重ねる中で出てきた課題を1つずつ解消して着実に成長してきた。

競泳の日本学生選手権女子総合最多23度優勝の日体大への進学理由も「経験」を積むため。3位になった1月の全豪選手権では他国の選手と競い合ったことで、よりレベルの高い環境に身を置く必要を痛感した。同大にはOWSのトップ選手も所属し、より多くの大会出場も可能だ。4月の全米選手権はコロナ禍で派遣中止となったが、蝦名は「今の時期でできることをやっていく。この期間を大切にしたい」。憧れる湘南の海のように広がる夢へ、歩みを止めない。【浅水友輝】(おわり)

<オープンウオーターとは>

◆スタート 開催地にもよるが、海、湖、川などに固定された壇上から飛び込む。泳ぐのに十分な深さの水中から笛による合図で始まることもある。

◆環境 コース上のすべての地点は水深が1・4メートル以上。水温は16~31度の範囲で、条件によりロングの水着やウエットスーツの着用が当日に決まる。「低体温症になる選手もいる」(蝦名)。

◆コース 五輪などは10キロ、国体などは5キロで実施。競技者は水面に浮かぶブイをすべて回って全コースを泳ぐ。泳法はフリースタイル。接触は故意の場合など失格の対象となるが「海外の選手は体の上に乗っかってきたりして、足を取られたりもする」(蝦名)。

◆給水 コース上に桟橋などで給水ポイントを設置。各チームは5メートル以内の給水用のさおを使って、泳いでいる選手に渡す。給水時は背泳ぎなどになる。

◆生物 自然の中で開催されるためクラゲなどの生物の影響もある。「透明な海は岩とか魚が見えてしまって怖い。少し濁っているぐらいが良い」(蝦名)。

◆蝦名愛梨(えびな・あいり)2001年(平13)11月25日、北海道帯広市生まれ。2歳半で競泳を始め、帯広つつじが丘小3年のときに十勝SCに加入。競泳800メートル自由形では帯広第二中3年の全国中学6位。帯広大谷では3年連続全道優勝。OWSでは国体に16年から4年連続出場、17年から3年連続日本選手権出場。好きな食べ物はプリン。好きなタレントは山崎賢人で、出演ドラマ「好きな人がいること」をきっかけに湘南の海に恋する。家族は両親と姉、弟2人。167センチ、58キロ。