4年ぶり3度目の優勝が懸かる男子の羽生結弦(26=ANA)が106・98点で首位発進した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年ぶりの開催となった世界一決定戦。2種の4回転などジャンプをすべて成功させ、100・96点で2位の鍵山優真(17=神奈川・星槎国際高横浜)や、ミスが出た3位ネーサン・チェン(21=米国)の98・85点を上回った。22年北京五輪の枠取りが懸かる大会。フリーは27日に行われる。

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全日本に続き、ロックスター羽生を世界にお披露目した。上下ブラック。金ラメのジャケットにエナメルの革パンツで蹴り上げ、人さし指を突き上げ、ウインクした。エレキギター音に乗ってギアを上げ、4回転サルコー、4回転トーループ-3回転トーループ、そしてカウンターからのトリプルアクセル(3回転半)だ。すべてが完璧だった。

昨年末の全日本選手権(長野)以来今季2戦目。当時の103・53点を超える106・98点へ積み上げてきた。4季ぶりロックナンバー「レット・ミー・エンターテイン・ユー」。選んだ理由は明確だ。コロナ禍で沈む世相を、少しでも明るく-。自身も楽しんでいる。「ピアノも自分を表現できるけど、ロックも心の底から鼓動だったり、呼吸を表現できると思う」と。

SP1位。世界選手権デビューで100点を超えた鍵山が、演技直後に「えっぐい、、、!!!」とツイートした出来だった。それを無観客の会場から世界に発信し「こういう時だからこそ、ネットでもテレビでもスマホの前でも、楽しんでもらえたらいいな」と渡航できないファンを思いやり、昨年のモントリオール大会が中止になっての2年ぶりの世界最高峰舞台には「当時は急に目標を失ったような感覚があったけど、今回は皆さんの尽力で、僕らの努力を発揮できる場を用意してくださった。ありがたい」と感謝を込めた。

孤高の歩みは続く。その全日本以降も、オーサー・コーチらがいる拠点のカナダに渡れず、日本国内で単独調整してきた。今大会に向けて出発する直前には宮城県で最大震度5強の地震が発生し、搭乗便の変更も余儀なくされた。予定が狂ったことを明かしながら、本番で決めるのが羽生。「1人は大変だけど、曲かけ練習に自由があったり、器械体操や陸上の理論も取り入れられた」。そのオーサー氏が跳び上がって喜ぶほどの演技で自立を見せた。

27日のフリーへ、まずトップに立った。それでも慢心はない。「今日は今日で出し切れたけど、あと1日あるので、しっかり休んで万全の体調にして。フリーでも、表現したいこと、自分が目指している演技を1つ残らず、ここに置いていきます」と完全燃焼する。

最終滑走で「天と地と」を舞う27日へ「1つ1つ丁寧に、プログラムの背景だったり、皆さんの中に残っている記憶、思い出を想起させられる演技ができればいい」。映像を通して、心に訴えていく。【木下淳】

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