おそらく“最初で最後”であろう競演が実現した。両チームの背番号「15」が観客の視線を引き寄せた。

ヤマハ発動機は15年W杯日本代表の五郎丸歩(35)、NTTドコモは19年W杯で南アフリカの優勝に貢献したマカゾレ・マピンピ(30)。試合後、フル出場した五郎丸がほほえんだ。

「FBで対極的なプレースタイル。私はキック、彼はランニングがメイン。見ているお客さんは楽しかっただろうし、やっぱり(マピンピは)世界レベルだと思いました。非常に刺激的でした」

何かに導かれたようなFB対決だった。

今季限りで現役引退を表明している五郎丸。今季6試合のうち、出場は3試合目だった。大阪・花園ラグビー場で戦った3試合は、いずれもメンバー外だったため「関西のみなさん、お待たせしましたという感じ」と2試合ぶりの先発を喜んでいた。

一方のマピンピも同じく今季3試合目。外国人選手の出場枠の問題もあり、出場機会が限られている。試合2日前のメンバー発表時点では本職の左WTBで先発に名を連ねた。だが、当初FBで先発予定だったFB高野祥太(27)が負傷し、試合前日にFBでの出場が発表になった。マピンピはこう明かした。

「FBをやるのは、プロになって初めてでした」

そんな2人の競演だった。

五郎丸は12点リードの前半14分に相手防御ラインを突破し、CTB石塚弘章(27)のトライを演出。代名詞といえるゴールキックも4本中3本を成功させた。

「連敗していてチームが苦しい中で、長くヤマハにいる人間として、チームをいい方向に向けるためにまずは勝つことを優先にしていました。FWを戦わせるためにエリア(陣地)的に前へ出す。それは80分間できたと思います」

一方、マピンピはほろ苦い出来となった。相手の防御を個人で打開する場面は少なく、後半6分には故意の反則でシンビン(10分間の一時退場)となった。世界的スターであるマピンピだが、この日は学びが多かったようだ。

「それなりにできたが、まだまだ満足していない。映像で振り返ったら、ポジショニングなど反省点があると思う」

両チームともに10日の最終節を経て、舞台は一発勝負が続くプレーオフトーナメント(17日開始)に移る。五郎丸は「ピークはもう少し後かな、と思います」と伸びしろを口にし、マピンピも「次に向けてやっていきたい」と力を込めた。

トップリーグだからこそ生まれた「FB対決」が、桜満開の万博をさらに彩った。【松本航】