日本代表の座をかけた5番勝負が、大詰めを迎えようとしている。新旧の日本選手権優勝ペアによる激突。直接対決1勝1敗で迎えた最終日は、午前10時半からの試合で松村千秋(28=中部電力)と谷田康真(27=コンサドーレ)のペアが快勝して代表の座に王手をかけた。対する吉田夕梨花(27=ロコ・ソラーレ)と松村雄太(31=コンサドーレ)は、この日残り2試合(午後3時半、7時半)での逆転を誓う。

実力伯仲の両チームによる対戦は、兄松村雄太と妹千秋のきょうだい対決であることでも、注目を集めている。大会前日の会見で兄は、父保さん(60)から「千秋を応援する」と言われたことを笑いながら明かした。そして妹は「きょうだいげんかしてこい」と送り出されたエピソードを披露した。

そんな父保さんは大会前に日刊スポーツの取材に応じ、2人への率直な思いを口にしていた。

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2人の父保さんも選手として、なぎささん(61)との夫婦ペアで日本選手権に出場していた。今年2月の全農日本選手権決勝では、前年Vの妹千秋のペアが勝てば日本代表に決まるはずだった。しかし、その一戦では、兄雄太のペアが連覇を阻み、代表決定戦にもつれ込むことになった。決勝後の会見で悔し涙を浮かべた千秋。報道陣の前で涙ぐむ娘の姿を遠目に確認した父は、「千秋は感情を抑えるタイプ。人前で泣いている姿を見せることはほとんどなかったので、本当にびっくりした」と振り返る。

松村家は4きょうだい。長野県軽井沢町で育った4人の子どもたちは、全員がカーリングに親しんできた。2番目に生まれた長男の雄太と3番目の次女千秋は3歳違い。「雄太は自己中心的な性格だし、千秋も折れないしで、中学や高校生ぐらいのころまでは毎日のように大げんかをしていた」と、父は苦笑いを浮かべて明かす。

そんな2人も大人になるにつれ、お互いの存在を認め合う、仲の良い兄と妹へと成長。一流カーラーとしての道を歩んできた。雄太は吉田姉妹の長女(元選手)と結婚したため、ペアを組む夕梨花は義妹でもある。

そんな兄と妹が、日本代表を懸けて争っている。「周りの人たちからは『大変ですね』とよく言われます」と笑う保さん。周囲の声をよそに、父は達観した心境でいるようだ。「どっちかが勝てばどちらかが負ける。それが勝負事。ただ、こういう大きな舞台に2人が立てていること自体が光栄なこと」。

日本選手権決勝のときと同様に、どちらか一方を応援するわけではない。ひたすら愛情あふれる目で、勝負の行方を見守っている。【奥岡幹浩】