注目の松村きょうだい対決は妹のペアが制し、日本代表の権利をつかんだ。20年日本選手権優勝の松村千秋(28=中部電力)と谷田康真(27=コンサドーレ)のペアが、今年の同選手権を制した吉田夕梨花(27=ロコ・ソラーレ)と松村雄太(31=コンサドーレ)のペアに連勝。1次リーグの直接対戦も含めて通算3勝1敗とし、北京五輪出場枠が懸かる最終予選(12月、オランダ)への出場を決めた。熱戦の後に妹の松村千秋は、兄雄太と健闘をたたあえった。

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決着がつくと、3日間の激闘を繰り広げてきた4人が敵味方なく抱擁し合った。実兄の松村雄太との勝負を制し、妹の千秋は「やっと日本代表になることができた。今はほっとしている」と涙ぐんだ。パートナーの谷田は「言葉に表せられないぐらい最高の瞬間」と実感を込めた。

1次リーグの直接対決は1勝1敗の五分。迎えた最終日、まずは初戦に勝って王手をかけると、続く試合は追いかける展開となったが、粘り強く戦い抜いた。追い付いた直後の第5エンド(E)で一挙3点を奪われて引き離されたが、直後の第6Eでパワープレーを選択し、相手のミスにもつけ込んで4点獲得して逆転。千秋は「100点のエンドだった」とうなずいた。

相手ペアには、今年2月の日本選手権決勝で苦杯をなめさせられていた。連覇を果たせば日本代表になれた一戦を落とした後、悔し涙を流した千秋。それから約半年後、両親から「きょうだいげんかをしてこい」と激励を受けて臨んだ大会でリベンジを果たした。「苦しい展開が続いていたけど、楽しかった。兄も投げ負けていなかったので、お互いたたえ合いたい」と笑顔を見せた。

松村家の2番目に生まれた長男の雄太と3番目の次女千秋は3歳違い。父保さん(60)によれば「今では本当に仲がいい」という2人も、「中高校生ぐらいまでは毎日のように大げんかをしていた」。当時について千秋は「態度では勝っていたと思うけれど、年齢差があるので(きょうだいげんかでは)勝てなかった。向かっていっては、返り討ちにされていた」と笑う。

14チームが出場する最終予選で、上位2位までに入れば北京五輪への出場切符を手にする。「負けられない戦いはまだまだ続く」と千秋。4人制男子日本代表でもある兄とともに、チームジャパンの一員として大舞台を目指す。【奥岡幹浩】

〇…松村千秋のパートナーである谷田は、コンサドーレの一員として男子4人制でも五輪切符を目指す。筋骨隆々の両腕から繰り出す力強いスイープは持ち味の1つ。2種目での五輪出場を目指して下半身も徹底強化してきたそうで、この2カ月で「240キロ走り込んできた」。この日出場した4人中、唯一半袖でプレーし「長袖を着たら、風呂上がりみたいになってしまいます」と笑った。

◆カーリング混合ダブルス 男女1人ずつのペアで争う。4人制より2エンド少ない8エンド制で行われ、各エンドにつき1チーム5回ずつストーンを投げ合う。1人目は1、5投目、2人目は2~4投目を担当。両チームがセンターライン上の所定の位置に1つずつストーンを置いた状態から始まる。後攻チームは1試合に1度、ストーンを置く位置を左右いずれかにずらして配置する「パワープレー」を選択可能で、複数点を取るチャンスが拡大する。五輪には前回の平昌大会から採用され、日本は出場権を獲得できなかった。

◆北京五輪への道 今大会の勝者は日本代表として、来年の北京五輪の出場枠が懸かる最終予選(12月5~9日、オランダ・レーワルデン)に出場する。同大会には14チームが参加し、残る2枚の五輪切符獲得を目指す。北京五輪には10チームが出場。5月の世界選手権(スコットランド)で上位だった8カ国がすでに出場権を確保している。その世界選手権に日本からは吉田夕と松村雄のペアが臨み、11位で北京五輪出場切符を逃した。