東京五輪で史上最多の5個の金メダルに導いた柔道男子代表の井上康生監督(43)が30日、2期9年の任期を終えた。

オンラインで退任会見を開き、「失敗や挫折も含めた上で、財産となる貴重な経験をさせてもらい感謝しかない。鈴木ジャパンも誕生したので、次は副委員長として支え、一緒に戦いたい」と述べた。

男子代表監督には、井上体制で重量級コーチを務めた04年アテネ五輪100キロ超級覇者の鈴木桂治氏(41)が就任した。鈴木氏は強化活動において井上体制を継承する考えを示しているが、「鈴木先生は私にできないたくさんの力を持っている。度胸もあり先見の明もある。アイデアもあり、新たに切り開く力もある。鈴木カラーを前面に出してチームづくりをしてもらいたい」と激励した。

井上氏は10月1日付で全日本柔道連盟の強化副委員長に就任する。自身の今後に関して「まだ道半ばで通過点に過ぎない」と言及し、「これまでの経験を生かして次のステージでどう生かすかが重要。(9年間の監督を終え)節目だが、『終わり』という言葉はどうしても当てはまらない。強化はもちろん、『柔道が価値あるもの』と言ってもらえるような環境づくりをしていきたい」と話した。

会見を終えると、「最後に1点」と切り出し、報道陣へ感謝の言葉を伝えた。「心残りというところで…コロナ禍で難しいが、こう振り返るとやっぱり皆さんと対面取材できた楽しさがあった。最後までこういった形(オンライン)になり、そこは残念だった。オンラインは自分自身を守るような発言になったり、空気が読めなかったりする。社会背景の難しさもあるが、1日でも早く(鈴木ジャパンの)監督、コーチ、選手らが対面取材できる日を願っている。みなさん、本当にありがとうございました」。勝負魂を持った43歳の指揮官が1つの区切りをつけると、報道陣から画面越しに温かい拍手が送られた。