新ペアを結成した柚木心結(ゆのき・みゆ、15=京都宇治FSC)、市橋翔哉(24=関大)組が競技会デビューを果たした。

フリー68・92点を記録し、合計98・34点。出場は1組だった。

2回転ルッツ、2回転サルコーのスロージャンプを成功させるなど、結成から約2カ月での成長を披露し、ペア初挑戦の柚木は「今日の日がいつか『あんな演技をしていたな』と笑えるぐらい、上手な選手になりたいです」とニッコリ。市橋は「スケート人生の中で一番楽しかったです」と喜びをかみしめた。

19年以降(20年は新型コロナウイルスの影響を考慮して実施せず)ペアの全日本選手権出場は三浦璃来、木原龍一組(木下グループ)の1組にとどまっていた。2人だけでなく、ペア種目発展に向けて、大きな第1歩となった。【松本航】

◆一問一答

-演技を終えて

市橋「自分自身、ペアの試合は3年ぶりになります。やっぱりいろいろなことがあった1人の時間が長くて、いろいろな感情も生まれた時間でした。それでもまた、こうやって、ペア選手として競技に戻ってこられたことが、すごく自分の中では幸せです。やっぱり久しぶりの場所に戻ってきて、安心感より、緊張感が強かった。昨日も今日も緊張したままで、どうなるかと思った。昨日は良くなかったけれど、今日は自分たちでも笑って終われる演技ができました。『諦めずに、ここまでやってきて良かったな』と感じました」

柚木「始まる前は滑りきれるかが、すごく不安でした。途中からはそんな不安もかき消すぐらい、心から本当に楽しめました。『ペアをやりたい』と小学生の頃から思っていた。北海道から(現在拠点の)京都に『ペアをやるぞ!』と思って来ました。デビューができて、今日は今までの中ですごくいい演技ができた。笑顔で終われて良かったです」

-なぜ「ペアをやりたい」となった

柚木「小6の時に名古屋でトライアウトがあって、興味本位で行ってみました。リフトで上がった時がすごく楽しかった。その時は(身長)130センチ。『高い高い~』みたいな感覚でした(笑い)。それが『いいな』と思って、そこから4年ぐらい、ずっとやりたいと思っていました」

-柚木に関してはシングル(ジュニア女子ショートプログラム=14位)から、約1時間半後の演技だった

柚木「先生方に『大丈夫だぁ!』って言われたので『大丈夫なんだ!』って思って試合に臨みました。あんまり(疲れで)『あぁ…』っていうのはなかったです」

-笑顔が印象的だった

市橋「僕自身はあんまり笑うのが得意じゃないというか(普段の)演技中は技のことを考えています。今日のフリーは本当に、スケート人生の中で一番楽しかった。気持ち良く、楽しく滑っていたら、ちょっとぐちゃぐちゃになったけれど、すごく楽しい4分間で幸せでした」

柚木「翔哉くんが(普段)試合で厳しい顔をしていたのは知っていました。私はそういうタイプじゃなくて、感情がすぐ表に出る。調子良ければ笑顔だし、調子良くなければ『ぶすっ』となる。翔哉くんが笑顔で、私も笑顔で滑れました」

-お互いの印象や特徴は

市橋「トライアウトした時から『ペアに向いている選手だな』って感じています。ペアの技のセンスが僕の中ではあると思っている。心結ちゃんは『不器用』って言うけれど、(結成)2カ月でここまでできたのはセンスあってのもの。ペアをしたい思いもあるし、ペアをするために出会った存在かなと思います」

柚木「何回も同じことを注意してくれたり、教えてくれて、ちゃんと支えてくれる。とにかく支えてくれたので『翔哉くんと組んだら絶対に大丈夫だ』っていう安心感があります。パートナーが翔哉くんで良かったなと思います」

-市橋の前パートナー三浦(璃来)が飛躍している

市橋「やっぱり解散してからもペアの試合はよく見ていたので、木原選手と三浦選手の活躍も見ていましたし、単純に『すごいな』と思っています。日本人同士のペアスケーターで、世界でメダルを取れる時代がきた。リスペクトの気持ちも、うれしい気持ちもあって。ただ、うれしいだけで終わっちゃダメ。自分たちもそこを目指していかないといけない。『日本人はダメ』という意見も多いけれど、その言い訳は使えない。自分たちも1日でも早く認めてもらえる存在になれるように、動画とかを見て参考にしています」

-普段の練習は

市橋「ペアの練習に関しては平日の午前中、たまに夜もやっています。関西大学で1日2~3時間の練習をやっています」

柚木「私はその後に宇治の木下アカデミー(京都アイスアリーナ)で、夕方から1時間半ぐらいシングルの練習をしています。土日はシングルしかないので、3時間はシングルの練習です」

-ペア、カップル競技は愛称で呼ばれることが多い

市橋「それ、考えようと言っていてそのままで…。今のところ『みゆしょー』と呼んでいただくことが多い。『しょう』は伸ばします。『お互いで考えようね』って話しています」

柚木「2人とも趣味と特技が謎なんです」

市橋「『なぞーず』とかは!?」

-「キス・アンド・クライ」でプロ野球の鳥谷敬内野手のタオルを持っていた

市橋「プライベートなのですが、阪神にいた時から鳥谷選手がすごく好きでした。鳥谷選手のプレーを見るために(球場に)足を運んでいた。ロッテに移籍して悲しかったけれど、現役を続けるために移籍したので、応援しようと思っていました。(先日)引退発表をされた。たまたまタオルを引き出しから出そうとしたら、一番上にありました。『これはキスクラでメッセージになるかな?』と思って、心結ちゃんにも持ってもらって、巻き添えにしました(笑い)」

-次は全日本選手権(12月、さいたまスーパーアリーナ)になる

柚木「初めてすっごい大きな舞台に立つので、緊張よりも不安の方がいっぱいだと思います。でも翔哉くんと一緒なら絶対に大丈夫。また自分たちらしく、今日みたいに、心から楽しんで滑れたらなと思っています」

市橋「久しぶりに出られる喜びを、滑りながら感じるのも目標です。今日みたいに、まずは楽しみながらやれることをやれば、結果がついてくる。あんまり硬くならずに、堂々と演技ができたらと思います」

-将来の目標は

市橋「小さな目標は1つ1つの技のレベルアップ。大きな目標は木原選手、三浦選手のように、世界の大会で堂々と滑ってメダルを取って、どこにいても恥ずかしくないようなペアスケーターになりたいです」

柚木「レベルアップしていきたいけれど、自分たちのペースで焦らず、少しずつでいいので、今日の日がいつか『あんな演技していたな』と笑えるぐらい、上手な選手になりたいです」