明日26日、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さん(28)がスケーターとして初の東京ドーム公演となるアイスショー「GIFT」に臨む。出演者は羽生さん1人。アマチュア時代よりも長時間の滑りを全うするには、栄養摂取も重要な鍵になる。実は、プロ初公演で同じく単独公演だった昨年11、12月に行われた「プロローグ」から、食事面での模索は始まっていた。
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ここに食事メニューの資料がある。東京ドームでの独り舞台を前に、羽生さんをアマチュア時代からサポートしてきた味の素ビクトリープロジェクト(VP)が作成したもの。「GIFT」期間中の朝食、昼食、夕食の主菜、副菜、汁物、果物に加え、「エネルギー補給」「疲労回復」など各食のテーマ設定もされ、細かい栄養素の数値化がぎっしり並ぶ。羽生さんがプロとして新境地を切り開いていくそばで、新たな食の提供案を模索してきた軌跡が、そこに刻まれていた。
始まりは昨年11月、プロとして初滑りとなった「プロローグ」の横浜公演。「僕1人ですべてをやりきる」のひと言だった。通常のショーは複数の選手が登場し、それぞれの作品を披露する。それが約90分間を1人で…。演技披露が主に1日1回の試合とは違い、出ずっぱりとなれば、体力の消耗もより大きくなるのは確実。では、どうサポートを変えていくか。五輪2連覇含め、支えるプロとしての対策が始まった。そもそも小食のため、食べやすい食事を心がけてきた。特に試合日の緊張感は激しく、食事は苦労して食べることも承知。それらを踏まえ、試合とは異なる行動パターンに沿う献立を探った。
味の素VPの栗原秀文チームリーダーは、まずは互いに情報交換し、メニューを組み立ててみたという。できるだけ食べやすくを念頭に、従来よりあっさり、柔らかく。「豚肉ときのこのおろし煮」「カラフル野菜のごまあえ」「豆苗と豆腐の彩り中華スープ」などで主菜、副菜、汁物を構成した。
横浜公演を終えると、試合とショーのエネルギー消費の差も数値化した。ショーでのスケート時間は33分にも及び、ジャンプ回数16回などからエネルギー消費量が増加。連日公演でもあり、2日目にはさらに体力的にきつくなることも分かった。
3日間開催となった12月の八戸公演でも情報をさらに収集。チームは精度を高めた。羽生さんが1度試食し、おいしいのでサポートでも出してほしいと依頼があった「丸ごとカマンベールうま塩フォンデュ鍋」も組み込んだ。味付けや素材をさらに工夫し、東京ドームへ。
「羽生結弦の半生とこれからを氷上で表現する物語」。それが「GIFT」になる。演出にはPerfumeらを手がけるMIKIKOさんが加わり「既存のアイスショーから進化させたい」と語る。プロローグ(序章)から、さらに描くプロとしての理想像を高め、新たなスケート観を提示する舞台。体内の準備も「ドームモード」で万全に、その場所に立つのだと感じた。【阿部健吾】
【11月の横浜公演での献立】
11月3日 朝食
・ごはん
・だし巻き卵
・ほうれん草としめじのおひたし
・みそ汁
11月3日 昼食
・ごはん
・鮭とアスパラの生姜炒め
・エナジーギョーザ
・豆苗と豆腐の彩り中華スープ
11月3日 夕食
・ごはん 鶏の照り焼き丼
・コンディショニングギョーザ
・オニオントマトサラダ
・エネルギー豚汁
【12月の八戸公演での献立】
12月3日 朝食
・卵雑炊
・豚肉ときのこのおろしポン酢かけ
・みそ汁(人参/豆腐/たけのこ)
・いちご
・オレンジ
・低脂質牛乳
・納豆
12月4日 昼食
・ごはん
・豚とかぼちゃのだし煮
・オムレツ
・エナジーギョーザ
・みそ汁(かぶ/人参)
・低脂質牛乳
・フルーツ(キウイ/パイン/シャインマスカット)
12月5日 夕食
・おにぎり3個(塩/昆布/鮭各100グラム)
・鶏肉の照り焼き50グラム
・だし巻き卵60グラム
◆「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2023 “GIFT” at Tokyo Dome」
羽生さん製作総指揮のスケーター史上初となる東京ドーム単独アイスショー。同所にリンクを設営するのも初めて。最新テクノロジーを駆使した「絵本のような」(本人)物語で、タイトルの意味は「恩返しの贈り物」(同)。今月11日にSS席2万7500円をはじめとする全席種のチケットが完売した。韓国、台湾、香港も含めた国内外の映画館での生上映や有料ライブ配信も行われる。午後3時開場、同5時開演。公演は約2時間半。