新たな歴史の扉を開けてきた日本代表の戦いが終わった。世界ランキング6位の日本(A組1位)が、同4位の南アフリカ(B組2位)に3-26で敗れ、準々決勝で敗退した。

自国開催の舞台で1次リーグを無傷の4連勝で首位突破。初の決勝トーナメント進出を決め、列島をラグビー一色に染め上げた1カ月。「ONE TEAM」を旗印に躍動した日々を戦い抜いた。準決勝のカードは26日がイングランド-ニュージーランド、27日がウェールズ-南アフリカとなった。

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南アフリカがボールを蹴り出すと、リーチは右膝をつき、天を見上げた。荒い呼吸で秋の夜風を吸い込んだ。初めて進んだ準々決勝。日本代表の戦いが終わった。ふーっと息を吐くと、もう、誰よりも強い主将の姿がそこにあった。ピッチでの円陣。ともに戦った仲間に「下を向く必要はない。胸を張ろう。今後の態度が大事だ」と力を込めて言った。涙を流す稲垣とがっちりと握手。ファンの待つスタンドにゆっくりと進み、深々と頭を下げた。

世界を驚かせてきた歩みは8強で止まった。だが、大会を通じ、日本の強さをこれでもかと見せつけた。「このチームの主将ができて誇りに思う。3年前から努力し、勝つためにすべてのことをやってきた。今日は南アフリカが素晴らしかった。80分戦い抜けたのはこのチームの強さ。多くのファンに感謝したい」。

持てる力は出し切った。前半は3-5と理想的な接戦に持ち込んだが、後半はセットプレーで守勢に回り、3度目の優勝を狙う強国の圧力にのみ込まれた。1対1の局面で少しずつ押し込まれ、3、8、23分に立て続けにPGで失点。25分には中央からのラインアウトを確保され、40メートル後退。中央を突かれ、守り続けてきたゴールラインを破られた。じりじり開いていく点差。真っ赤に染まったスタジアムの祈るような声援も届かず、29分には再び左サイドにトライを奪われた。

1次リーグから数えて5試合目。体はぼろぼろだった。それでも、ピッチに立った全員が力の限り走り続けた。試合前、君が代を歌い終えたSH流は泣いていた。左にレメキ、右に田村。肩を寄せ合った仲間の体温が、これまでの日々を思い出させた。点差が開いても、全員が足元に突き刺すようなタックルで耐えしのいだ。逃げない。ただボールを必死に追った。

80分間、死力を尽くした。試合後のスタジアムには、31人の勇者を心からたたえる拍手が鳴り響いた。歩んできた道に間違いはなかった。史上初のベスト8。色あせない結果とともに、どんな相手も恐れない姿は日本中の感動を呼んだ。ジョセフ・ヘッドコーチは続投する方針で、23年フランス大会へ、道は続く。3度目のW杯を終えた34歳の田中は、涙をぬぐい言った。

「ずっと思い描いてきた光景が目の前に広がっていた。15年W杯を見た選手が今回活躍した。この大会を見た若い選手が頑張れば、また次の道が開く。これが日本ラグビーの幕開け。日本は進化していける」

桜の戦士の歩みは止まらない。【奥山将志】

▽プロップ稲垣 家族のようなチームで、この31人でもう試合が出来ないことを考えると悲しい。このチームでプレー出来たことを誇りに思う。

▽フランカーのラブスカフニ 南アフリカが改めて強いことが分かった。(南ア出身だが)日本代表として8強に進めたことは非常に誇りに思う。最高のチームだった。ファンのみなさんもありがとう。