<柔道:世界選手権>◇29日◇オランダ・ロッテルダム

 【ロッテルダム=佐々木一郎】日本男子が、がけっぷちに追い込まれた。4日目に登場した90キロ級の小野卓志(29=了徳寺学園職)も3回戦で敗退した。5階級を終え、メダルは60キロ級の平岡の銀だけ。階級制が導入された64年東京五輪以降の世界大会で、初の金メダルなしに終わる可能性が出てきた。30日の最終日は、100キロ級に穴井、100キロ超級に棟田が登場。昨年引退した井上康生特別コーチ(31)が、棟田のコーチボックスに入ることが決まった。

 期待の小野まで、メダルに届かなかった。初戦の2回戦を1本勝ちしたが、3回戦はチョリエフ(ウズベキスタン)に負けた。先に指導を2度受け、残り22秒で内またを繰り出したが、有効すら取ってもらえなかった。メダル候補の1人がわずか2戦で大会を終えた。

 「組み手を持てれば、投げられると思っていた。それが自分を硬くした。勝ちたい思いは、相手の方が強かった」と小野。男子は初日の平岡こそ決勝に進んだが、66キロ級の内柴、73キロ級の大束、81キロ級の塘内は準決勝にすら行けなかった。その悪い流れを小野も変えられなかった。気付けば最終日しか金メダルのチャンスはなくなった。

 篠原監督は前夜、小野をホテルの自室に呼び「今まで通りの試合をすれば、結果はついてくる」とプレッシャーの軽減に努めた。今大会初めて、自らコーチボックスで指示を出したが、劇的な効果は得られなかった。男子を率いる立場として「私を含めて反省していかないといけない。私の考えが甘かった」と話した。

 吉村強化委員長はベテランのふがいなさを指摘し「これからは、世界で勝ちたいやつしか、連れてこない。男子は代表になっただけで満足している。若手をどんどん出して、負けてもロンドンにつながるやつを出した方がいい」と言った。12年ロンドン五輪を目指す最初の年に、いきなり試練が訪れた。

 07年世界選手権は金ゼロの危機を棟田が救った。最終日は、穴井と、その棟田が登場する。コーチボックスには、篠原監督と留学先の英国から駆けつけた井上特別コーチが、それぞれ入る。篠原監督は「少しでも(選手を)知っていた方がいい。重量級(のコーチ)から見る目と、中量級が見るのとでは違ってくる」と康生効果に期待した。