弊紙の評論家と同行し宮崎のキャンプ地を回った。巨人、広島、ソフトバンク、オリックス、西武の5カ所。10日間の滞在で、各所に平均2回、足を運んだ。

 受付にメニュー表が置いてある。1日の動きから評論になりそうな選手や練習に狙いを付け、動きを決める。巨人であったらカミネロやマギーといった新戦力。ソフトバンク松坂、西武菊池のブルペン。オリックスは吉田正のフリー打撃…。興味の沸きそうな題材は、ある程度決まってくる。

 評論家の琴線に触れ、事前の打ち合わせにない選手の動きにピタッと足が止まり、そこから微動だにしないケースがある。ブルペンが完了するまで全く動かず、その後の予定に狂いが生じることもある。このイレギュラーこそ本来、我々が敏感に感じて、ピックアップしなくてはいけない。プロの目に留まるプロは、そうはいない。

 自戒を込めて書くが、名前や実績の先入観、紙面構成の都合で価値判断が曇ってはならない。滞在中に評論家が着眼し、でも掘り下げて評論するには至らなかった選手を紹介する。

 三浦大輔氏…「あそこまで丁寧に投げる外国人に初めて会った。足もとが固いWBC用のブルペンで投げているけど、不慣れだから丁寧という訳じゃない。1球ごとにフォームを確認して、シャドーを入れたりしている。普段から気をつけていないと、あんな動作は出ない。ボールはもちろん強いし、2月上旬なのにあれだけの精度がある。オランダ代表で日本戦に先発したら、手ごわい相手になるだろう」(4日、ソフトバンク・バンデンハークのブルペン投球後)

 「最後の組で投げていたルーキーは即戦力として楽しみ。リリースが強く、ベース板の近くで失速しない真っすぐを投げていた。下半身がどっしりしているのもいいというか、自分は好み。リリーフ向きと思うが、1軍に割って入れるのではないか」(5日、西武ドラフト6位田村伊知郎投手のブルペン投球後)

 緒方耕一氏…「どちらかといえば好みのタイプの投手。つまり、打者目線から見ると打ちづらい、嫌なタイプということ。体重移動の時、左半身を上げ、右半身を下げる。力強く体を入れ替えて、ややアーム気味で上から豪快にたたいてくる。打席で見上げる感じになって、目線を合わせるのが難しい。高低のバラつきがまだ大きいので、ある程度でいいから低めに集まってくれば1軍で通用すると思う」(8日、広島ドラフト1位加藤拓也投手のブルペン投球後)

 「あれだけ上手に下半身を使える投手は、めったにいない。優しく左足で踏み出して、体重移動が完璧だから、フィニッシュの右足も優しく接地している。投球教則のお手本に出てきそうな美しいフォーム。後ろで見ると、投げるボールは『えぐい』のひと言。素晴らしいフォームのたまもので、低めが全く失速しないでそのまま伸びてくる感じ。カーブの抜けもすごくいい。絶対に出てくる素材」(9日、ソフトバンク高橋純平投手のブルペン投球後)

 想定外に出くわすと、うれしそうに話してくれる。名前を挙げた4投手に注目したい。【宮下敬至】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)