仙台育英(宮城)のエース右腕佐藤世那(3年)が進化した。明豊(大分)戦に先発して8回を4安打1失点。2年ぶり25度目出場のチームの初戦突破に貢献した。春より腕の振りが速くなり、初回に自己最速を2キロ更新する146キロを計測した。スライダーでもカウントを稼ぎ、決め球にもなった。20安打を放ち大勝した仙台育英は、14日の2回戦で滝川二(兵庫)と対戦する。

 夏のマウンドに「ニュー世那」がいた。先頭打者の4球目に、いきなり146キロをマーク。序盤に球速140キロ台を連発した。「昨日、おとといと状態が良かったので、いい球がいくんじゃないかと思っていた」。予感通りの投球に、優勝候補のエースは気持ち良さそうに汗をぬぐった。

 昨秋からフォークでカウントを稼ぐことがあった佐藤世はこの日、スライダーでストライクを取るシーンが目立った。「しっかり腕が振れるようになった。振りが速くなった」と明かす。今春は右肘の不安があり、センバツ直前の練習試合の投球回数は4イニングが最長。神村学園(鹿児島)との1回戦を完封したが、この夏は「ここ最近、スライダーに自信がついた」と胸を張る。6月の東北大会、7月の宮城大会などで登板を重ねた。マウンドに立つ回数が増えて腕が振れるからこそ、最速を更新し変化球も切れる。

 「人は一瞬で変われる」。佐々木順一朗監督(55)から、宮城大会前と終了後に教えられた。1日の大阪入り後、「監督の言葉を信じて」(佐藤世)一塁側に開き気味だった左肩の位置を、10日足らずの短期間で修正。腕の振りに加え、フォームも安定した。同監督は「(宮城大会の)準々、準決勝とみんながダメな世那を見ていたので、世那に自信を取り戻させてあげたかった」と言った。その期待にも応えた。

 初回に味方が5点を奪い「気持ちが楽になった」。奪三振は7だったが、許した得点は7回の1点だけ。9回にマウンドを譲った百目木(どめき)優貴(3年)が、この夏に頭角を現し「だいぶ楽ですね」。エースを強力打線と成長著しい同級生投手が支える。チームの総合力は春とは違う。

 「今日のようにボールがしっかりいけば、大量失点はないと思う。フォームが安定すれば(球速は)もっと出る」と自信満々に言い放った。最後の甲子園で右肘の不安も解消し、ひと皮むけて初戦を突破した。大きな期待を背負いながら春に逃した「大旗の白河越え」。今度こその思いで、エースはマウンドに立ち続ける。【久野朗】