名寄地区悲願の春夏通じて初甲子園を狙う稚内大谷が武修館に3-2で逆転勝ちし、14年ぶりの8強進出を決めた。背番号10の小松港(みなと)左翼手(2年)が、同点の2点適時二塁打に、決勝点を呼び込む内野安打とラッキーボーイに。本間敬三監督(32)が「“神ってる”ばりの打撃」と絶賛した伏兵の活躍で、第1関門を突破した。8強が出そろい、今日5日に準々決勝4試合が行われる。

 2点を追う4回1死二、三塁。「スクイズはいらないから、打たせるぞ」。本間監督の指示を、意気に感じた。左中間を破る同点の適時二塁打を放った小松は「無心でした」と照れ笑い。6回2死二塁では、詰まった打球が捕球体勢に入った三塁手の真正面で大きく跳ねて、内野安打に。慌てた三塁手が悪送球し、決勝点につながった。

 初めて公式戦の打席に立った名寄地区代表決定戦でも、満塁の場面で左前適時打。本間監督は「“神ってる”ばりの打撃。みんなが『こいつ、持っているぞ』と思っている」と、ラッキーボーイの出現を喜ぶ。「技術じゃなく、声がいい」と評価されてベンチ入りした背番号10は、いつの間にか、戦力としても不可欠な存在になっていた。

 猿払村のホタテ漁師の家に生まれ、名前は「港」。幼い頃からホタテ漁を手伝い、高校卒業後は、父と兄の後を追って船に乗ると決めている。スポーツ一家で、姉の渚さん(23)は札幌大谷バレー部で全国大会に出場。兄潮(うしお)さん(24)は北海学園札幌野球部で、08年秋の全道大会で準優勝した。「兄も、この麻生球場でタイムリーを打っているんです」。8年前の全道大会で活躍した兄の姿を、自身に重ねた。

 兄は決勝で鵡川に1-3で惜敗し、甲子園出場を逃した。「父にも兄にも、甲子園へ行ってくれと言われている。どんな形でもいいから、甲子園へ行きたい」。準々決勝では、その鵡川が相手。不思議な運命に、再び活躍の予感が、ぷんぷん漂う。【中島宙恵】