「神ってる」東海大福岡が、甲子園でも奇跡を起こした。同点で迎えた9回1死一、二塁から併殺かと思われた直後に相手悪送球でサヨナラ勝ち。エース安田大将(だいすけ)投手(3年)が9回4安打1失点、奪三振0の完投劇でミラクルを呼んだ。福岡勢同年2校出場のダブル初戦突破はセンバツ史上初となった。

 やっぱりミラクルが似合う。東海大福岡が甲子園でも奇跡を起こした。9回1死一、二塁から併殺と思われたが相手二塁手が悪送球し、二塁走者が一気にホームイン。エース安田は、ホームインの星野とハイタッチし、三塁コーチャーの大久保朋主将(3年)と抱き合った。2得点はともに敵失。信じられないサヨナラ勝ちにナインは歓喜した。

 横手投げ安田のクレバーな投球がミラクルを呼んだ。「打者が考える時間がないようにテンポ良く投げることを心がけた。三振を取りにいったら球数が増えるんで」。わずか95球、飛球アウト16、三振がゼロの1失点完投。入学時の入試成績首席でスーパー特進コースの秀才は、最速126キロながら制球力抜群の投球で勝利をもたらした。

 故障者が出ては結束してきたナインの絆が天に通じた。主将の大久保は新チーム発足と同時に全治6カ月間の左太ももの肉離れで離脱。エースを期待されていた佐田も腰痛で秋の大会は投手を断念していた。「みんなで大久保、佐田を甲子園に」を合言葉に昨秋九州大会は準決勝まで3試合連続逆転勝ちの劇勝でセンバツをつかんだ。この日もアクシデントが発生。7回守備で清水がファウルゾーンへの飛球を捕球しようとして接触し右手親指、左膝を負傷しベンチに下がった。「ケガを恐れずアウトを取りにいってくれたし勝たないといけないと思った」(安田)。ベンチ裏の応急処置から清水がベンチに戻った直後、サヨナラ劇が生まれた。

 「東海大五」として2回戦に進んだ前回出場の1985年(昭60)以来、32年ぶりの勝利。「東海大福岡」では“初勝利”に杉山繁俊監督(60)は「みんな落ち着いていた。でも『持っている』とは思いません。ラッキーは続きませんから」と気は緩めない。2回戦は希望していた早実戦。ミラクル劇の勢いを今大会注目度NO・1にぶつける。【浦田由紀夫】

 ◆奪三振ゼロ 東海大福岡・安田は三振を奪わずに勝利。奪三振ゼロの完投勝利は15年田中誠也(大阪桐蔭)が常総学院戦で記録して以来(3失点)。金属バット採用後(春は75年以降)の1失点以下では、91年小土居(広陵=対市川)以来4人目。