<全国高校野球選手権:興南4-1仙台育英>◇17日◇3回戦

 98年の横浜(神奈川)以来12年ぶりの春夏連覇を目指す興南(沖縄)のトルネード左腕、島袋洋奨投手(3年)が6安打10奪三振完投で8強進出を決めた。仙台育英(宮城)戦に先発し、自己最速を2キロ更新する147キロをマーク。春夏甲子園通算奪三振を106個に伸ばし、大台超えを果たした。金属バット導入以降、6度目の2ケタ奪三振は駒大苫小牧・田中将大(現楽天)、早実・斎藤佑樹(現早大)に並んだ。18日の準々決勝は聖光学院(福島)と対戦する。

 沖縄の「ドクターK」島袋が、沖縄県勢の夏の100試合目の節目で甲子園に「伝説」を刻んだ。

 立ち上がりから直球で押しまくった。1回、仙台育英の4番井上に自己最速を2キロ更新する147キロをマーク。2回には直球でこの夏2本目の本塁打を浴びたが「今日は直球が走ってるぞ」というナインの言葉に後押しされた。勝負どころでは140キロ台の直球で勝負した。アドレナリンが噴出したのは7回2死満塁。2番佐々木には6球すべて直球勝負。最後は中飛に打ち取った。「直球が狙われているのは分かっていたけど、勝負球以外では勝負したくなかった」と強気に言うように、相手を上回る気迫でマウンドを守り抜いた。

 4度目の甲子園で計10試合。通算奪三振数は106。田中の102(3季12試合)、斎藤104(2季11試合)を上回った。12年前に春夏連覇を果たした松坂の姿は記憶にないが、中学生のときにテレビで見た斎藤の姿はくっきりと頭に焼きついている。「あんな強豪を相手に再試合までよく投げられるなあと見ていました。しかも1回戦からほぼ1人で投げたのがすごいと思っていました」。今、同じマウンドに立ち、その記録を超えた。「三振よりも勝ったことが良かった。でも記録は記録としていいように考えたいです」と淡々と振り返る。自分の力を出し切れば、結果や記録は必ずついてくると信じている。

 誰よりも小さかった少年が、甲子園で記録を打ち立てながら勝ち進んでいる。中学入学時の身長は146センチ。「小学生のころは小さくて、ほかの子の肩ぐらいしか背がなかったんですよ」と母美由紀さん(47)は言う。少年野球では試合でどんなに打たれてもマウンドから降りなかった。投げても投げても打たれて、悔しくてマウンドで泣きながら、それでも相手に向かって投げ続けた。負けず嫌いは生まれつき。173センチと小柄な体で全国屈指の左腕に成長したのは「誰にも負けたくない」という思いが常に心の中にあるからだ。

 チームは30年ぶりの夏8強進出。あと1勝で42年前、我喜屋優監督(60)の現役時代の4強に並ぶ。「明日も厳しくなると思うけど、勝たないと次はないので」と気を引き締め直す。監督に並ぶのはあくまで通過点。沖縄初の春夏連覇という伝説を島袋がその左腕で打ち立てる。【前田泰子】