阪神能見篤史投手(36)がベテランの力を見せつけた。投球は高めに浮いた。2回、4回といずれも併殺に仕留めながら、安打を許す。ピンチも招いた。それでも踏みとどまった。「粘ったというかね…。バランスが悪かったから、6回にはフォームをゆったりにした」。

 本調子ではなかった。1点の援護をもらった直後の2回、2死から日本ハム岡に4号ソロを浴びた。6回には投球フォームをゆったりさせることで球を低めに集めることができた。マウンド上でひらめき修正。「藤井さんがいろんなボールを選んでくれた」とベテランの合わせ技。6回を5安打1失点で今季4勝目を手にした。

 5月28日に36歳の誕生日を迎えた。「ピチピチの36歳でしょ!」。そう言って甲子園のグラウンドへと向かった。毎年、千江子夫人が用意してくれた誕生日ケーキを家族5人で囲む。3人の子どもたちからの「おめでとう」の言葉が一番のプレゼントだという。エネルギーの源がいつもそばにいてくれる。力を与えてくれた。

 「僕としては7回もいくつもりでいたんだけどね。チームとして勝負を懸けた」。6回2死一、二塁で回った能見の打席。代打に狩野が送られた。まだ86球だった。それでも元女房役の流れを引き寄せる適時打に、能見はベンチの最前列で拍手を送った。「狩野が打ってくれた。僕の代打の時、狩野はよく打つからね」とたたえた。

 5月23日DeNA戦以来、2試合ぶりの白星。「しっかり自分でも続けていきたい。シーズンは長いからね」。余ったパワーは次のマウンドにぶつけてくれるはずだ。【宮崎えり子】