ベテラン勢の去就に揺れる中日で来季構想外になっている小笠原道大内野手(41)が、決勝打を放った。2-2で迎えた6回2死満塁、ヤクルト小川の直球を捉え、右前に適時打を放った。去就が注目される中で、45日ぶりに1軍復帰。「声援に応えるために」と一瞬の勝負に集中し、衰えぬ勝負強さでチームを勝利に導いた。
まさに千両役者だ。「バッター、小笠原」。少しため気味のアナウンスにナゴヤドームのボルテージが最高潮に達した。2-2で迎えた6回2死満塁。大声援を浴びた背番号36が、マウンドのヤクルト小川にギラリとにらみを利かせる。
「何とか打てる球を捉えたいと思って打席に入った。うまく捉えられて、人がいないところに弾んでくれた」
4球目、低め143キロ直球だった。歯を食いしばり、体勢を崩されてもボールをつかまえる。打球は一、二塁間を抜けライト前にはずんだ。野球職人は一振りで任された仕事を完遂。7月30日に今季2度目となる出場選手登録抹消で2軍落ち。この日、45日ぶりに1軍復帰し、すぐに結果を出した。
お立ち台ではこみ上げるものをこらえているようにも見えた。スタンドからは「ガッツ、やめないでー!」の声も飛んだ。球団は若返りを図る方針から、今年42歳になる小笠原を、来季の構想外とすることを決めている。そんな状況をファンも当然、理解している。真っ黒に日焼けしたベテランに声援がやまなかった。
降り注ぐ拍手と声援について聞かれた小笠原は「最高です!」と柔和な笑みを浮かべた。そして「グランドに足を踏み入れた時から、これだけの声援をもらった。応えるためにも必死で食らいついていきました」と感謝。去就については「それはそれで自分がやるべきことを1日1日やる」と明言を避けたが、光景を目に焼き付けているようだった。
誰よりも早く球場に到着し、試合の準備を整える。試合が終われば、その瞬間から明日への準備が始まる。谷繁兼任監督は「彼の集中力は長年培ってきたもの。若い選手がまねしようと思ってもうまくいかないかもしれないけど、少しでも取り入れてほしい」と、生きる教材としても小笠原を高く評価した。シーズンは残り13試合。生き様はグラウンドで示す。ガッツは最後の最後まで力を振り絞る。【桝井聡】



