覚せい剤取締法違反(所持、使用)罪で起訴された元プロ野球選手清原和博被告(48)の弁護人は、貧困などの理由で私選弁護人を頼めない時などに利用できる国選弁護人とみられることが16日、分かった。弁護人は同日、東京地裁に清原被告の保釈を請求した。地裁が許可し、被告側が保釈金を納めれば17日にも警視庁本部から保釈される。

 清原被告の弁護人は16日午前、東京地裁に保釈を申請した。地裁は検察官の意見などを聞いた上で、保釈の是非を判断。決定した場合、早ければ17日にも保釈される。この弁護人は、刑事訴訟法で定められている国選弁護制度を利用した国選弁護人とみられる。

 国選弁護制度は、法定刑が死刑、無期懲役、最長で3年を超える懲役が想定される犯罪の事件の時、貧困などの理由で私設弁護人を頼めない場合に利用できる。国選弁護人を選任したい時は、裁判所に資産額などの書類とともに申請する。資産が現金や預金などで50万円以下の場合には利用できるが、それ以上の資産を有する場合でも、私設弁護人を引き受ける弁護士がいなければ、国選弁護人を利用できる。裁判所が職権で選任することもある。

 清原被告が国選弁護人を利用したとみられる理由は分かっていない。逮捕前に住んでいたマンションの家賃は月額数十万円とみられ、高級外車にも乗っていた。これまでの警視庁の調べで、車で北関東に移動して売人から覚せい剤を購入し、都内の高級ホテルに宿泊する行動を繰り返していた疑いが判明している。これらの行動をすべて自己資金で行っていたとすれば、国選弁護制度を利用できる以上の資産を持っている可能性はある。清原被告の弁護人選任を巡っては、関係者から「過去に付き合いのあった特定の弁護士に頼んでいる」「交流がある関係者に弁護人の相談をしている」「弁護したいという弁護士が多く選任に至っていない」など、さまざまな情報が入り乱れていた。一方で、同被告を知る関係者からは「できるだけ他人に迷惑をかけないように気を使っているのでは」との話も聞かれている。今回の逮捕から裁判にいたる手続きで、知人を巻き込みたくない思いが背景にある可能性もある。国選弁護人の登録を取りまとめる日本司法支援センター(法テラス)は取材に「個別の事件について、国選弁護人の選任があったかどうかはお答えしていない」としている。

 ◆国選弁護人とは 刑事訴訟法は「貧困その他の事由により、私選弁護人を選任することができないときは、国選弁護人の選任を請求することができる」と定めている。

 「貧困」の場合は、現金、預貯金など資産の合計額が50万円以下であることを記した資力申請書を提出しなければならない。清原被告の場合、貧困ではなく「その他の事由」で私選弁護人を選任することができなかったとみられる。

 法定刑が3年を超える懲役・禁錮にあたる事件(必要的弁護事件)は、弁護人がいなければ開廷することができない。私選弁護人が選任されていない場合、裁判所は国選弁護人を選任しなければならないことになっている。有名な事件ではオウム真理教の松本智津夫死刑囚は当初、私選弁護人だったが、これを解任。国選弁護人が選任された。

 国選弁護人は私選弁護人に比べ報酬が安い。被告本人が選ぶことができないため、コミュニケーション面などで不安が出るケースもある。訴訟費用は「貧困」の場合、国が負担するが、「その他」の場合は裁判所の判断になる。清原被告の場合は負担免除にはならないとみられる。