ついに出た。楽天ドラフト1位のオコエ瑠偉外野手(18)が、待望のプロ初安打で笑った。7回1死一、二塁。カウント1-1から、阪神の左腕榎田の外角低めに沈むシュートをすくい上げた。ライナーが右前で弾む。「それまでの打席でフルスイングをしていたので、変化球が多くなると思っていた。あの流れで打ててうれしかったです」。初めての感触に胸が震えた。

 プロで学んだ技術を集約させた一打だった。4月14日の2軍落ち後、グリップの位置を肩から胸の前に下げるフォームに挑戦。「1軍の投手は低めの球が多くて、今までのダウンスイングだとボテボテのゴロになった。アッパー気味にしてライナー性が打てるように工夫しました」。足りないものを補うために、考えた。左足の上げ幅を増やしてタイミングの取り方も調整。「2軍でやってきたことが出せました」。外角低めに逆らわないスイングから、初安打は生まれた。

 努力が結果に表れる、技術が好きだ。「ずっと身体能力が高いとか、ハーフだからとか言われてきた。その反抗心で、技術を大切にしてきたんです」。木製バットへの対応は簡単ではなかったが、過程は楽しかった。芯の位置を知ることに始まり、内側からバットを出すスイングの徹底。朝晩振り続け、ヘッドスピードはキャンプインの130キロから150キロにまで上昇。「池山コーチも試合が終わった後マンツーで打撃に付き合ってくれて、めちゃくちゃ振れました。一日中バット振れるんですよ。きつかったけど、楽しかった。どんどん変わっていくんですから」。週に2回のウエートも週4回に倍増。プロ2度目の先発で積み重ねを実らせた。

 1つ壁を乗り越え、8回には初のマルチ安打となる左前打が出た。それでも「先輩たちは3打席に1回、ああいう打球を打っている。野球は難しいなと思いました」と顔をゆがめた。打てたから分かった感覚がある。この1本がプロ生活の糧になる。【松本岳志】