極太の柱が帰ってきた。「日本生命セ・パ交流戦」が開幕し、右肩痛から1軍初昇格した巨人阿部慎之助捕手(37)が“開幕戦”でいきなり逆転本塁打を放った。1点を追う6回2死一塁で右翼席へ豪快な2ラン。交流戦歴代2位タイとなる通算51号でチームに交流戦初戦の勝利をもたらした。かつてない出遅れを経験したが、阿部の大逆襲が始まる。

 阿部は“開幕戦”でも勝負師だった。6回2死一塁、カウント1-1。右手で右太ももをたたく。「開かないように。気合を入れた」。強振できる失投が来た。開かない右足が壁となり、一気に解放した力強いスイングで西の142キロの高め直球をたたきつぶす。完璧な低弾道が右翼席に飛び込んだ。「開幕戦(シーズン初戦)でホームラン打ったことなかったから、うれしかった」と格別の感情に浸った。

 お立ち台で「最高です!」と決めゼリフを放ったが、ここまでの道のりを「最低です」と正反対に表現した。リハビリ生活はかつてない苦痛だった。キャンプで右肩痛を発症。故障は数知れないが、捕手にとって致命的だった。「今回のリハビリは本当にきつい。精神的にもね」。右肩をかばい、下半身や右肘にまで違和感を覚えることもあった。ペースが上がらず、生きた心地がしなかった。

 それでも信念は揺らがなかった。「(選手として)終わったとは言わせないよ」。不安をかき消すために、血液から変えた。2軍での練習前に、愛飲していた微糖の缶コーヒーをやめ、麦茶のペットボトルを選ぶようになった。「麦茶は健康飲料だろ? 血液から変えて健康にならないとな」。節制と同時に、巨人一筋でオレンジに染まった血を変える決意が行動に表れていた。

 低迷する打線の起爆剤として、捕手復帰への途中で1軍に呼ばれた。チーム51戦目での“開幕当日”の朝。2軍生活に慣れ、午前7時に目が覚めた。直前の2軍での実戦に「体はバキバキ。でもオヤジパワーで頑張るよ」と、ベッドで決意を固めた。

 三振した第1打席は「さすがに緊張した」と縛られたが、復帰戦で代名詞の本塁打を披露した。現状は捕手での出場は当面先だが「今は打つ方で貢献したい」と誓う。残り92試合。出遅れた借りは、必ず返す。【細江純平】

 ▼今季初出場の阿部が本塁打。チーム51試合目での1号は昨年の43試合を抜いて最も遅いが、自身の出場試合数では03、09、11年の2試合目を抜いて最速。プロ16年目で初めてシーズン初出場の試合で1発を放ち、初出場試合でV打は10年3月26日ヤクルト戦に次いで2度目だ。これで交流戦は通算51本塁打となり、中村(西武)の67本に次いで村田(巨人)に並び2位タイ。通算145打点は和田(中日)に並び4位タイに進出した。昨年まで交流戦の開幕戦は41打数19安打、打率4割6分3厘と強く、得意の「交流戦開幕」で今年も活躍した。