メリハリが利いた心地よい快投だ。阪神岩貞は8回3安打1失点で耐え忍び、4戦ぶりの白星となる6勝目を記録した。代打が送られた8回に味方が逆転し、10敗目が6勝目に転じた。

 2回、4番ロペスへのチェンジアップが甘く入り、左翼席中段まで先制ソロを運ばれた。「相手(今永)の出来を見たら、もうあれ以上点はやれないと思った」。7連敗中の嫌な流れに突入かと思われたが、ここで粘れたのが成長の証しだ。

 「ファウルで詰まらせるのか、空振りを取るのか。投げるボールで何がしたいのか、明確にしよう」

 香田投手コーチの一言がスパイスとなった。2回に被弾した直後、一塁側ベンチでアドバイスを受けたという。「基本的なところですけど、初心を思い出すことで立ち直れました」。押し込みたければ140キロ台後半の直球をズドン。引っかけを誘う場合はスライダーとチェンジアップを動かす。空振りを取りたければ臨機応変に最善の球種を。奪三振数は5個と控えめだったが2四死球の安定感。わずか99球で8イニングをクリアし、金本監督からも賛辞の言葉を並べられた。

 「球数を少なくしてテンポも良くて。ナイスピッチングです。岩貞が1点に抑えてくれたことが逆転につながった」

 今日5日は25歳の誕生日。「いい形で24歳を締めくくれた。また25歳になって新たに頑張っていきたいですね」。今季投球回数は128回1/3まで伸び、初の規定投球回143イニング到達はもう間近だ。「選手全員クライマックスシリーズに行くつもりでやっている。闘志を前面にむき出して頑張っていきます」。お立ち台で声を張り上げる姿はもう、台頭したての若虎には見えない。【佐井陽介】