81年の球団史に、その名を刻んだ。巨人田口麗斗投手(20)が、7回1失点の好投でプロ初の2ケタ勝利を達成した。巨人の高卒3年目以内では、88年桑田以来。左腕では51年の松田清以来、65年ぶりの快挙だった。「10勝して、浮かれているようでは。また、ゼロからと思って、1つでも2つでも貢献できれば」と感慨に浸らず、前を見た。

 暗闇からはい上がり、2カ月で7勝を積み上げた。6月28日の中日戦でKOされ、自身3連敗を喫した翌日。エース菅野から「こういう時こそ、みんなはお前の姿を見ているぞ」と声を掛けられ、背筋がピンと伸びた。「何かを変えないと」と考え、試合の映像を何度も見直した。

 躍進のカギは「封印」と「回帰」だった。今季、新たに習得したツーシームは打者の手元で変化し、バットの芯を外す“魔球”と化した半面、直球がシュート回転し、キレと威力が落ちた。封印を決め、直球の精度に磨きをかけた。「要所で三振が取れた」。3回2死一、二塁、福留から奪った三振は、この日最速の140キロで空を切らせた。

 メトロノームのように、淡々と刻むリズムも流れを呼び込んだ。不調に陥った6月末、広島新庄高時代から、持ち味だった「テンポの良さ」を回帰。夏の甲子園大会で躍進した母校の姿も相まって、高校時代の投球テンポに戻した。ブルペンでは「今年一番、悪かった」状態でも、見事な投球。チーム一番乗りの2ケタ勝利で、チームは甲子園8連勝を飾った。【久保賢吾】

 ▼3年目の田口が初の10勝。巨人で高卒3年目以内の2桁勝利は、2年目の87年に15勝、3年目の88年に10勝した桑田以来だ。他球団では大谷(日本ハム)藤浪(阪神)若松(中日)の3人が昨年記録しているが、最近は右投手ばかり。高卒3年目以内の左投手が2桁勝利は91年今中(中日=12勝)以来となり、巨人では1リーグ時代の49年に入団して3年目の51年に23勝の松田以来、65年ぶり。2リーグ制後に巨人へ入団した高卒左腕では初めて3年目までに10勝した。