ソフトバンク松田の意地の1発が、9回の逆転劇を呼び込んだ。2-4で迎えた8回2死から1点差に迫る左越えソロ。日本ハム宮西の甘く入った直球を捉え、左翼席中段まで運んだ。CSでの本塁打は11年以来、5年ぶり2本目だ。

 「2点差だったので、何とか1点差にして9回を迎えたかった。打った瞬間入ると思った。CSはどこで打つか。走者がいるところで打って打点を稼ぐか。前の打席で打てなかったので、開き直って打った」

 5回の3打席目は2死一、三塁の好機で遊飛に倒れたが、次の打席で相手左腕の失投を見逃さなかった。試合後はドーピング検査のため球場に残り、帰りのバスで仲間と勝利の余韻に浸ることはできなかったが、タクシーに乗り込む姿には、喜びがにじみ出ていた。

 チーム1のムードメーカーは今年、2月のキャンプ初日からアップのランニングで若手とともに先頭に立ち、声を出し続けてきた。その姿はシーズン中も同じ。前日に打たれた投手がいればジョークを交えて積極的にいじり倒し、明るさを取り戻させた。海外FA権を行使しながらも最終的にホークスに残留して迎えたプロ11年目。3年連続日本一をつかむために、チームを常に明るいムードにしようという思いは、この日も変わらなかった。

 札幌ドームの外は気温10度を切っていたが、10月の北の大地でも「熱男」だった松田。「0勝3敗で明日を迎えるのと、1勝2敗で迎えるのとでは全然違う。明日追いつくチャンスもある。とにかく明日、全力でいきたい」と、声を弾ませた。【福岡吉央】