<日本ハム1-0西武>◇27日◇札幌ドーム

 興奮のど真ん中に、日本ハム高橋信二捕手(29)がいた。鋭い打球が一塁線を抜けると、屈強な男たちが襲いかかる。コーラを浴びせかけられ、脇腹に何発もパンチが入る。延長10回、2つの敬遠策で迎えた1死満塁。代打で登場したヒーローは、直立不動でダルビッシュとともにお立ち台に立った。難攻不落だった涌井を砕いた。「向こうも『お前かよ』って思ってるでしょうね。こんな伏兵に」と、トークはさえ渡っていた。

 プロ入り12年目で初のサヨナラ打。自身の野球人生でも初で「運は持っていないと思っていた。奇跡ですよ」という一打になった。今季からドラフト同期入団の巨人小笠原が付けていた背番号「2」を受け継いだ。そんなお披露目でもある本拠地2カード、6試合のラストを、自力でドラマチックに完結させた。

 開幕から6試合でスタメン出場は1度だけ。「出た時に、出た試合で仕事ができればいい」。カウント2-0からの3球目。きわどい外角直球を最悪でもカットしようと手を出し、結果的にフェアゾーンへ転がった。無欲な思いが、そのまま打球に乗った。3勝3敗の勝率5割で長期ロードへの出発を導いた。終始、厳しい表情だった梨田監督も「絵に描いたような展開」と目を細めた。高橋の快音が、再スタートの号砲になった。【高山通史】