<中日4-0広島>◇30日◇ナゴヤドーム

 後味の悪いナゴヤの夜になった。広島は中日に0-4と完敗し、開幕シリーズを2敗1分けで終えた。先発長谷川は立ち上がりに失策絡みで失点したが、5回まで先発の役目を果たす力投を演じた。ただ、6回の同点機にブラウン監督は「長谷川続投」を選択して、その回の攻撃を捨てた。采配は裏目に出て、その裏にダメ押し点を許した。深い思惑があったのは確かだが…。地元で再出発だ。

 中村紀の打球は広島ファンの悲鳴とともに左翼席に消えた。0-4と点差を広げられる痛恨の2ラン。普通なら「まだ6回。たった4点差じゃないか」と前を向きたいが、この日は事情が違った。2点が鉛(なまり)のように三塁側ベンチを押しつぶした。

 今季はローテーションの軸として働く長谷川は、その期待にたがわぬ粘りを見せた。初回に失策がらみで1点を失った。2回、3回も走者を出したが、キレのいい直球とフォークを主体に強力打線にあと1本を許さなかった。4回に森野に逆球を運ばれ2点目を与えたが、5回は3者凡退。確かに、ここから加速しそうな気配はあった。

 この日の焦点は6回の攻防だった。表の攻撃。2死一塁から8番山崎の代打・嶋が中前打で一、二塁。ネクストには森笠が控えていたが、ブラウン監督はなんとそのまま長谷川を打席に送った。決して打力があるわけではない。ナゴヤドームの中日ファンすら「え~」と驚き、失笑も起きた。当然というべきか長谷川は凡退した。

 監督は平然と説明した。「長谷川は状態が悪くなかったから決断した。今日は何とか勝たせてあげたかった。昨年までは早めに代えることもあったが、あえて続投させてベンチが彼に自信を持っているというメッセージを送りたかった。攻撃も3回残っていた」。まだ2点差。勝負はまだ先。その裏にリリーフを出すより長谷川続投の方が抑える確率が高いと踏んでいた。しかし、右腕は期待に応えられなかった。

 一見、常識では考えられない采配だ。だが、敵将・落合監督は一塁側から同情の視線を送っていた。「考えようだよな。2対0ならまだ勝負になると思っていたんだろう。(采配について)周囲は結果論でガチャガチャ言うけど、ベンチをあずかる責任感は重いんだよ」と理解を示した。ちなみにブラウン監督は嶋が二塁打を放って二、三塁となった場合は続投か代打かを「迷った」という。

 エース黒田が抜け、大竹と同じように「1年間しっかりローテの中心で投げたい」と気合を入れていた長谷川。6回2失点以上という先発のノルマを果たすことを目標にしていたが、目前で1発に砕かれた。

 「あの2本は防げた。走者を出しても粘れていたので余計にもったいない。今日は持っているものはすべて出した。打たれたものは仕方ない。次しっかりやるしかない」と前を向いた。1日はさんで広島で地元開幕戦が控える。たった3試合で下を向いていては何も始まらない。【柏原誠】