ダイエーの来季監督に元巨人監督・王貞治氏(54)の就任が12日、決定的となった。球団専務の肩書を持つ根本陸夫監督(67)の今季限りの勇退、フロント入りに伴う後任人事を進めてきたダイエーは、ここにきて王氏に次期監督候補を一本化した。既に水面下で両者は接触している。王氏はダイエーの目指す打撃を中心としたチームづくりにふさわしく、ダイエー本社が狙う九州を拠点としたアジア戦略にも「世界の王」のビッグネームはプラスになる。来季は王監督―根本球団専務体制でダイエー王国づくりが本格スタートする。

 ダイエーが球界を揺るがす何ともビッグな人選で「王国」づくりに着手した。球団誕生から5年目を迎えた一昨年秋、「チーム再建」の土台づくりとして中内オーナー自ら出馬し西武から根本監督をヘッドハンティング。根本体制2年目を迎え、その土台づくりも総決算の時期に入った。今季限りで根本監督の役目も終わることで、今度はダイエーを全国区のチームに変ぼうさせる監督候補の人選に入っていた。そこでかねて獲得したい人物としてリストアップしていた王氏に候補を一本化し、同氏の招へいを決めた。

 抜本的なチーム改革を掲げ、この2年でチームは大きく変革した。編成面の整備も根本監督を中心にトレード、FA(フリーエージェント)戦略を駆使。エース村田の放出までしてホームランを打てる秋山を獲得。FAで松永を獲得し、2番に山本を入れバントしない強気野球を展開。王監督の受け入れ態勢を整え終えた。

 「球界は何年も同じ野球をやっている。ファンの要求するチームづくりが必要」というのが持論の根本監督。「豪快」な野球を展開するダイエーのチームカラーに王氏の野球観はピッタリと一致する。監督に就任した当時も根本監督は王氏に「うちに来れば好きな野球ができる」と、次期監督としてのバトンタッチをにおわす発言をしていたこともある。これまで次期監督候補として広島時代に師弟関係で地元九州出身(熊本)でもある元広島監督の古葉竹識(たけし)氏(58=野球評論家)の名前も挙がったが、将来的なチームづくりという点からすれば古葉野球とは合致しにくく、打撃中心のファン受けする野球観を持つ王氏が適任と判断した。

 王監督誕生となれば、そのメリットは計り知れない。福岡ドーム元年の昨年は主催ゲームで246万人を動員しパ・リーグ新記録を樹立。今季も順調に観客数を伸ばしているとはいえ、今後の集客面から考えても868本の世界記録を持つビッグ「1」のネームバリューは絶大な効果があることは確か。また、本社ダイエーが目指しているアジア戦略の「旗手」として王氏は有形無形の意味でメリットのある存在になることは間違いない。

 王監督誕生により根本監督はフロント入り。専務取締役球団本部長として選手獲得など編成面を統括し「常勝軍団」づくりを裏方からバックアップする方向だ。これまで監督業との二足のワラジを履いてきた根本監督だが、フロント専従することによってチームづくりに関して本格的にそのらつ腕を振るうことになる。王氏にとっても、根本監督がフロントとして援護してくれれば、これほど心強いことはない。6年ぶり球界復帰の王監督と根本球団専務の強力体制でダイエーが来季球界に新風を吹き込む。

 王氏深夜の帰宅、驚きの表情

 王貞治氏は12日、午後11時に外出先から東京・目黒区の自宅に戻った。ダイエー監督について尋ねられるとしばらく沈黙した後、ちょっと驚いた顔を見せた。「そんな話は聞いていないよ。きょうは、古葉さんが監督になるって書いている新聞もあったでしょう?」。

 もちろん肯定できる時期ではない。ここには、王氏一流の気配りもある。「今はダイエーがいい感じで戦っている。それに水を差したくないね。セ・リーグは巨人が独走してもお客はある程度入るけど、パ・リーグは去年は日本ハムがそうだったように、今年はダイエーが頑張らないと入らなくなるからね」と話していた。(1994年7月13日付日刊スポーツ)