「日本一の山」で再出発じゃ!

 広島石井琢朗内野手(38)が6日、自主トレ先の静岡・伊豆市内で今季への意気込みを語った。昨季、横浜を戦力外になり、新天地でプロ21年目を迎える。「横浜での20年は自分のなかに置いておき、広島でイチから作っていきたい。すべてにおいて白紙の状態です」と気分一新した。

 自主トレを開始した5日には、長嶋茂雄巨人終身名誉監督らが現役時代にトレーニングを行っていた伊豆の国市内の城山(じょうやま)への登山を実施。「やっと始まった感じですね」。巨人をV9に導くなど“日本一”の原動力となった山に、あやかった。

 横浜時代の98年にはチームを日本一に導いた。広島に加入し、12球団の頂点を知る唯一の選手になる。球団首脳も石井の勝負哲学の伝授を期待している。「逆に自分が勉強になる。自分が成長しながら、違うことを伝えられるかもしれない」と話した。経験豊富な石井は、広島での日本一を大目標に掲げた。

 雪化粧した富士山の頂を背にして、石井が大粒の汗を流し続けた。ゴロを捕るフットワークは軽やかで、笑みがこぼれる。下半身強化のトレーニングでは歯を食いしばる。広島に新加入し、プロ21年目の挑戦が始まった。通算2307安打を誇るヒットマンの心境はルーキーさながらだった。

 石井

 横浜での20年は自分のなかに置いておき、広島でイチから作っていきたい。すべてにおいて白紙の状態です。真っさらな気持ちで広島に入った。チーム内の競争に勝っていかないといけない気持ちが強い。

 球界屈指のリードオフマンにとって、新年のキーワードは「日本一」だ。野手に転向した92年以降、日本最高峰のふもとである静岡県内で自主トレを続ける。前日5日には、伊豆の国市内の城山に早朝登山。恒例行事をこなし、気持ちを高めた。

 石井

 やっと始まったという感じ。長嶋さんが若いとき、大仁でやっていた。昨日(5日)登った城山は長嶋さんも走って登っていたんだよ。でも、走って登れるような山じゃないと思うんだけどね。日本一?

 やっているからにはね。

 長嶋氏は67年から73年まで伊豆大仁で自主トレを行った。山越えランニング、素振りなど野球漬け。技術よりも、スタミナ強化に専念した。巨人V9のまっただ中。“日本一の山”は、遠くに見える富士山よりも近くにあった。練習量では石井も負けていない。

 この日は午前9時前から動きだし、ゴロ捕球の基本動作を徹底的に反復した。下半身を鍛え抜き、シーズンを戦う土台を築く。午後からはティー打撃などを行った。約7時間の練習を終え、充実した表情で言う。

 石井

 体さえ、しっかり作っていけば「そこそこ」はね…。積み上げた数字は、何年置いても減るものじゃない。数字は、終わったときに振り返ればいい。

 通算安打数は球界歴代14位だ。上位には落合、川上、山本浩…。さらには長嶋氏(2471安打)もいる。「偉大な方が多いので、これもやっぱり現役を続けていないと…」。記録更新は復活への通過点。あくまでチームの優勝を目指す。輝かしい実績にとらわれず、石井は一瞬を大切に生きる。【酒井俊作】

 [2009年1月7日12時19分

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