<巨人4-6横浜>◇5日◇東京ドーム

 プロ生活28年目の5月5日は、ひと味違うバースデーとなった。この日46歳になった球界現役最年長の横浜工藤公康投手が、逆転勝ちした巨人戦(東京ドーム)でプロ入り初ホールドをマーク。2点リードの7回の1イニングを3人で抑えてみせた。守護神石井が不調のため出場選手登録を抹消されたが「新・勝利の方程式」の一員として新境地。先発ローテーションの一角としてスタートした4月は不調で2軍落ちも、頼もしい復活劇を演じた。チームは最下位に甘んじているが「ハマのおじさん」が浮上の起爆剤となるか-。

 試合後の三塁側ロッカー裏に左翼席からの「ハッピーバースデー」大合唱が響く。直後、46歳になったばかりの工藤が帰途への通路に出てくる。集まった報道陣の多さに驚きながら、丁寧に質問に答えた。

 工藤

 新たな挑戦というか、ボクが中継ぎで投げることがチームのプラスになると思うし、期待に応えたい。チームのためなら負けてるゲームでも最善を尽くすことに変わりはない。

 通算28年で222勝を挙げてきた左腕が、ハッキリとした口調で言葉を選ぶ。今季2戦目の中継ぎ登板は2点リードの7回だった。鈴木を遊ゴロ。さらに木村拓には鋭く曲がる「ちょいスラ」で空振り三振に切って取った。4月8日に2本塁打を浴びた小笠原にはスライダーでバットをへし折る。二ゴロで3者凡退にしのぐと、笑顔をはじけさせて三塁側ベンチに戻った。

 工藤

 とにかく先頭打者を切って3人で、と思った。上に上がって2試合目だけど、使ってもらえるようにこれからもリリーフ陣全体で盛り上げたい。勝てたことが何よりうれしい。

 変化の日々だった。昨季は左ひじ痛に苦しみ0勝。肩ひじのスタミナを取り戻すためオフだけで遠投など5000球超の投げ込みを行った。「かあちゃん(雅子夫人)にも『マッサージを受けすぎだからダメなのよ』って言われるんだ」と自らの新陳代謝を高めるため、毎日のように受けてきたマッサージをあえて辞めた。10年以上、個人トレーナーをつけてきたが、春先に契約を取りやめた。

 長年登板2日前だったブルペン調整さえ変えた。最後のオープン戦登板で前日にブルペン入り。4月8日の今季初先発(巨人戦、横浜)でも前日7日に入り、体に変化を与えようとした。だが結果は出ない。2軍調整中、中継ぎでの起用を打診され受諾。現役として生き残るためだった。

 工藤

 この年まで投げるとは思っていなかった。中継ぎで若い人に伝えられるものがあれば伝えていきたい。新たなことにドンドン挑戦していきたい。

 以前から「かあちゃんにも『残せば残すほど謙虚になりなさい』って言われる」と話してきた。実績にぶら下がらないことが、生き残る術(すべ)だった。木村拓への「ちょいスラ」も、肩ひじの状態がよくなければ封印する球種。持ってる力をすべてぶつけていた。

 大矢監督も「あのイニング(7回)が大きかった。1人出すと、もう1人投手を使わないといけない」とベテラン左腕に目を細めた。変化を恐れない。こどもの日なのに“ハマのおじさん”の目は輝いていた。【今井貴久】

 [2009年5月6日8時53分

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