<セCS第2ステージ:巨人5-4中日>◇第3戦◇23日◇東京ドーム
巨人が大逆転で2年連続日本シリーズ進出に王手をかけた。2点を追う8回、中日浅尾に襲いかかって一挙3点を奪って逆転勝ちした。ドーピング騒動の最中に登板した吉見に対し、一切ヤジを飛ばさないと試合前のミーティングで確認した紳士野球で大きな1勝をもぎとった。巨人は1勝のアドバンテージを含め3勝1敗とし、24日の第4戦に勝てば日本シリーズ(31日~)進出が決まる。
二塁ベースに到達した脇谷と同時に、ベンチを飛び出した原監督も両手を天井に突き上げていた。1点差に迫った8回2死一、三塁。代打に送った伏兵が1球で決めた。中日が誇るセットアッパー浅尾自慢の直球。「無心で」出したバットの“ど芯”を食うと右翼フェンスに到達した。2者生還で5-4。巨人が2年連続日本シリーズ進出へリーチをかけた瞬間だった。
この時を待ち焦がれていた脇谷を、伏兵と呼ぶのは失礼かもしれない。初球、内角低め150キロをためらいなくしばいた。いつも早出特打に付き合ってくれる宮村通訳が帽子の裏に書いた、「初球からいけ」の約束を守った。直前の宮崎合宿。脇谷は夜間練習に精を出した。最後に室内練習場を出ると「短期決戦はラッキーボーイが出る。研究が主力に集中して、ボクはマークが外れる可能性もある。準備だけしときますよ」と暗がりで不敵に笑った。「チャンスはある、と思ってた。くすぶっていた思いをぶつけた」。執念が詰まった値千金打だった。
7回に勝ち越しを許した直後の逆転劇。地に足をつけ戦えたからこその芸当だった。この日の相手先発は吉見。ドーピング疑惑のただ中にいた。動揺と、ふに落ちない複雑な感情が試合前の一塁ベンチにあった。「本当に投げるのか」「最多勝を争ったゴンちゃん(ゴンザレス)の気持ちを思うと…」。アップを行う吉見を見て、泣き出しそうな関係者もいた。直前ミーティング。原監督の言葉が選手の胸にすうっと染み渡っていった。
原監督
オレが止めなければ、我々のベンチからヤジが出るだろう。オレはそれを望まないし、止める。吉見君が何かを感じてくれればいい。スポーツの世界なんだから、正々堂々と戦おう。
サロンは静まり返ったという。選手を信じ、訓示を行う回数がめっきり減った指揮官が、野球人としてあるべき姿を込めたメッセージ。応えてくれた選手に感じ入り、原監督の顔は試合が終わっても紅潮していた。「最後に脇谷がね。まばたきして見てなかったよ。一発で仕留めた」と直球への対応を見込んで託した男を称賛。「1戦1戦。今日と同じ心理状態で戦っていく」と締めた。正面から堂々と、日本一を決める舞台へ歩を進める。【宮下敬至】
[2009年10月24日9時32分
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