怪物左腕が、ついに衝撃の“ブルペンデビュー”を飾った。最速155キロを誇る西武のドラフト1位菊池雄星投手(18=花巻東)が15日、西武第2球場で行われた新人合同自主トレでブルペンに入り、初めて捕手相手に投球練習を行った。捕手を立たせたままだったが、7割の力で直球のみ19球。それでもボールを受けたブルペン捕手、見守った球団関係者からは称賛の声が相次いだ。

 直球のみで19球、わずか7分間の“ブルペンデビュー”だった。それでも最速155キロ左腕の片りんをのぞかせるには十分だった。菊池の左腕から放たれたボールが、吸い込まれるようにミットに突き刺さる。「パン」。腕を振るたび、心地いい捕球音が室内練習場に響く。12日もブルペンに入ったが、相手はネットだった。「7割でどれくらい投げられるか見たかった。いい感覚でした」と充実感を漂わせた。

 ブルペン入りは、順調な調整と本人の強い意向から実現した。「(ブルペン入りは)もう少し遅くても良かったんです。でも状態が良くて我慢できませんでした」と笑った。お披露目を一目見ようと、鈴木編成部部長、新聞報道で知った大井2軍バッテリーコーチら20人のチーム関係者に見守られた。一新人の投球練習には似つかわしくない異様な光景にも、淡々と直球だけを投げ込んだ。もちろん全力ではない。それでも、軸足(左)1本で立った時の安定感、ムチのような左腕のしなりが逸材の証明だった。

 投球を受けた田原ブルペン捕手は18歳を絶賛した。「高校生の投げる球じゃない。130キロ前後くらい。軽く放っても指にかかって重い。もっとクセ球かと思ってたけど、きれいな回転でいいボールだった」。レッドソックス松坂の新人時代の球も受けており「松坂より雄星の方が球筋がきれい。ばらつきがなくてコントロールが悪いイメージがないし、力を入れたらどうなるんだろう」と手放しでほめた。視察した行沢2軍監督のほおは緩みっぱなしだ。「感動しました。久々にいいものを見せてもらった」と、すっかりほれ込んだ様子。さらに「1軍レベル?

 左であれだけ速く投げられるピッチャーはいない。楽しみ」と1軍当確ランプさえともした。

 キャッチボールではボールがばらついたが、ブルペンでは一変した。マウンドという本来のポジションに立ち、いい感覚をつかんだようだ。ブルペンでの投球練習は昨年10月以来。さらに14日には競輪トレーニングで1万メートル近く走るなど下半身には疲れがたまっていた。それでこれだけの投球ができるのが、怪物の証し。ただ、本来のスリークオーターのフォームからすると、左腕の位置が高い。もちろん自覚しており「ビデオで撮ったので、フォームチェックをします」と修正に余念がない。「真っすぐでフォームを固めたいです。今日は疲れてしまったので、自主トレで立ち投げ40、50球は投げられるように」と今後を見据えた。まだ、助走体勢に入ったに過ぎない。【亀山泰宏】

 [2010年1月16日9時22分

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