<阪神2-0横浜>◇13日◇甲子園

 出た、152キロ!

 阪神久保田智之投手(29)が横浜戦2点リードの9回に登板し、今季自己最速をマークして無安打無失点に抑え、オープン戦では3年ぶりのセーブを手にした。「JFK」時代の迫力を取り戻し、連続無失点試合も3試合に伸ばした。セットアッパー不在が真弓阪神の大きな懸案だったが、Fの藤川につなぐのは、やっぱり久保田しかいない。

 虎党を沸かせた、あの光景がよみがえった。勝ち試合の甲子園のマウンドに背番号30がいた。「JFK時代」を思い起こさせる会心の18球で、久保田が勝ち試合をビシッと締めた。

 「2年ぶりくらいですかね。でも自分のことで精いっぱいだったんで…」。

 久しぶりに甲子園で最後を締めた感想をたずねられると、少し表情を緩めた。実際には08年9月23日の同じ横浜戦以来、1年半ぶり。なつかしのシチュエーションはファンにはたまらないものだった。

 先頭金城には四球を与えたが、次の高森を変化球で二ゴロ併殺。圧巻は3人目の内藤への5球目。うなりを上げた球がファウルになり、電光掲示板には「152キロ」が浮かび上がった。この春のチーム最速。自身の最速157キロにはおよばないが復活を十分に印象づける剛球だった。

 「チェンジアップが抜けていたし、四球もあった。今日は何とも言えないですね」と満足はしなかった。152キロを含み150キロ超えは3球あったが「たまたまです」と無関心。JFK時代とは違い、立場が約束されていない緊迫感を漂わせた。

 試合後、真っ先にベンチを出てきた久保田は久保投手コーチをとともに、つかつかとブルペンに足を運んだ。制球に苦しんだ新球チェンジアップの修正だった。「感覚の問題ですね」と久保田。オープン戦3試合無失点としたが「開幕1軍に入りたい」と、必死に目標へ食らいついている。

 謙虚な本人とは逆に、頼もしさを覚えたのは真弓監督だ。「今日投げた投手はみんなよかったが、特に久保田だね。復活してくれるのが一番。藤川の前は、心配しているところでもあるんでね」。

 「J」ことウィリアムスが抜け、アッチソンも抜けた。期待の新外国人メッセンジャーも2試合連続失点中と絶対的な信頼を置けない。藤川につなぐセットアッパー役が2010年阪神の懸案材料。右肩痛や先発転向を経て「定位置」に帰ってきた剛腕が、再び熱い視線を浴びる。

 [2010年3月14日11時31分

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