鶴の恩返しだ。阪神鶴直人投手(23)が22日オリックス戦(スカイマーク)に先発し、敵将・岡田監督に成長した姿を披露する。プロ初登板初先発した08年6月15日ロッテ戦(千葉)は1死も取れずに6失点。当時の指揮官が岡田監督だった。5年目の今季はここまで4試合10イニング登板で防御率0・00と好調をキープ。かつての恩師への感謝をボールに込め、プロ初勝利をもぎ取る。

 立派に羽ばたきます-。鶴がかつての恩師の前で、恩返しのマウンドに上がる。22日オリックス戦に先発予定。敵将・岡田監督には特別な感情がある。甲子園クラブハウスに続く通路。まだあどけない表情の23歳は、少しだけ感慨にふけった。

 鶴

 感謝の気持ちはあります。オリックスに行かれても感謝しています。

 2年前に挫折を味わった。プロ初登板初先発した08年6月15日ロッテ戦(千葉)、1死も取れず6失点で降板。21歳で初めてプロのマウンドに上げてくれた岡田監督の期待に、応えられなかった。05年に高校生ドラフト1巡目で入団した時の監督でもある。2軍暮らしが長く、ほとんど会話をした記憶はないと言う。ただ、ひそかに感謝の気持ちを抱いていた。

 鶴

 遠山コーチ(現2軍育成コーチ)を通じて『監督がこう言っているから』とかアドバイスをもらった。会う機会は少ないけど、それでもちょっとでも見てくれているんだ、とありがたい気持ちでした。

 苦い思い出の残る1日から、2年。あのころと今では立場が違う。今季は2軍で好投を続け、4月27日に1軍昇格。693日ぶりの先発となった9日広島戦(甲子園)で6回2失点(自責点0)と好投し、ここまで4試合10イニングで防御率0・00と堂々の成績だ。自力でつかんだ今季2度目の先発マウンド。敵将となった恩師の前で成長した姿を披露し、プロ初勝利を手にするつもりだ。

 鶴

 野球は野球。試合は試合。タイガースが勝てるように、もし機会があれば、どんなところでもしっかり投げたい。もちろん、いろんな感情はあるけど、試合になれば…。勝負ごとなんで。

 この日は甲子園でキャッチボール、ダッシュなどの調整。若々しく弾ける笑顔の裏に、強い決意が隠されている。マウンドに上がれば感謝の気持ちをボールに込めるだけ。「必死なんで」。がむしゃらに勝利を目指すだけだ。【佐井陽介】

 [2010年5月21日10時49分

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