<中日6-3巨人>◇9日◇ナゴヤドーム

 オレ竜の4番が巨人を粉砕した。中日和田一浩外野手(38)が同点で迎えた7回、23号決勝ソロを放った。8日、落合博満監督(56)に「疲れかなんか知らんけど、そんな年じゃねえだろ」と尻をたたかれた主砲の意地の1発だった。4番に座った6月10日以降、本塁打を打った試合は6連勝で「不敗神話」が生まれようとしている。負ければ今季最大ゲーム差となる本拠地第1ラウンドを制し、6・5ゲーム差。首位追撃ムードが高まってきた。

 落合竜か原巨人か。両軍の間で迷っていた女神を和田のバットが振り向かせた。1-1で迎えた7回の先頭打者、その初球だった。巨人先発ゴンザレスのスライダーが真ん中にきた。思い切りたたいた打球は高く舞い上がると、左翼席に落ちた。「あの1球だけだった。仕留められてよかった」。23号決勝ソロで均衡を破った。4番の1発を合図に、打線が猛攻を仕掛け、この回5点を奪った。

 どん底の中での1発だった。初回の第1打席は遊ゴロ併殺、4回の第2打席も二ゴロ併殺にたおれた。「自分でもどうしていいかわからなかった。それくらい打撃がずれていた」。1試合2併殺は06年6月30日オリックス戦(前橋)以来。和田の記憶にも残っていない4年ぶりの“惨事”だった。プロ14年目、球界屈指のスラッガーが一瞬、パニックになるほどだった。

 打者の悩みはともすれば恐怖となり、バットを振る勇気を奪い去る。ただ、和田のすごみはここからだった。心が折れそうな第3打席、初球から信念のフルスイングを繰り出した。「振らないと結果は出ない。もし打てる球を見逃したら後悔するから」。そこにゴンザレスの失投がきた。いつものようにバットが出ず、絶好球にすらつまってしまった。それでも執念でスタンドに届かせた。

 意地を試される試合だった。森野、和田、ブランコの「BMW」が無安打に終わった8日の横浜戦後、落合監督はあえて3人の尻をたたいた。「疲れているのかなんか知らんけど。まだそんな年じゃねえだろ。疲れているんだったらいつでも休ませてやるよ。野球やめりゃ、ただの人だ」-。指揮官の叱咤(しった)を受け止め、翌日に答えを出した。「しっかりしろということだと思います。みんな万全ではないけど、それは疲れとは言わない。その中で毎年やっているから」。まさに4番の業だった。

 ブランコに代わって、4番に座った6月10日以降、本塁打を打った試合は6戦全勝と「不敗神話」ができつつある。「4番は進塁打を打てとも、バントを打てとも言われない。打つしかない。打たなければ(批判を)言われる。だから毎日、そう思って球場にきている」。絶不調の中で描いた放物線には、チームの勝敗を背負う男の覚悟がにじんでいた。【鈴木忠平】

 [2010年7月10日10時59分

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