<ヤクルト4-11阪神>◇18日◇神宮

 阪神がまたまたビッグイニングをつくってヤクルトに逆転勝ちし、首位巨人に0・5ゲーム差と肉薄した。2点ビハインドで迎えた7回、先発復帰3戦目の金本知憲外野手(42)が追撃の二塁打で勢いづけると、代打林威助外野手(31)の三塁打で同点とし、打者一巡の猛攻で一挙に6点を奪った。8回には城島のソロ本塁打で加点し、9回には4点を追加して11-4の圧勝。19日からは甲子園に戻って広島との3連戦。5月2日以来となる首位浮上が目前だ。

 金本の打球が右中間へと伸びた。白球は懸命にジャンプした中堅青木のグラブの先をわずかに越え、フェンスを直撃した。あと数十センチ足りず、先発復帰3試合目での初本塁打とはならなかったが、チャンスを無死二、三塁に広げた二塁打は、反撃の機運を高めるには十分すぎた。

 「あの一本が大きかった」。真弓監督も勝利の一因に挙げた追撃の一打は、2点を追う7回無死一塁で出た。先制のチャンスの初回2死満塁では空振りの三振に倒れた。4回の第2打席では先発復帰後、初安打となる右前打を放ったが、見事にバットをへし折られていた。最速157キロの直球で押してくる22歳下の由規に、闘争心をかき立て3打席目の打席に入った。

 カウント2-1からの4球目。151キロの高めつり球を真後ろにファウル。タイミングは合っていたが、浮き上がるような剛球に一瞬、驚いた表情を見せた。失投を待った6球目。152キロの直球をとらえて、神宮球場の雰囲気をガラリと変えた。1死後、代打の林が左中間へ同点の三塁打で続いた。平野の適時打、マートンの2ランなどであっという間に4点リード。金本のおぜん立てから、今季得意の逆転劇が始まった。

 痛めた右肩にはまだ、不安を抱える。そのため、首脳陣の間では当初、休みを挟みながら先発出場させる案が出ていた。2試合先発が続き、当然、ベンチスタートの案が出た。だが、金本は先発出場を直訴した。山脇守備走塁コーチは「(神宮は)人工芝だし(出場の)様子を見るかと本人に聞いたら出ますと言った。(前の2試合で)安打が出てないから、本人も試合に出たいというのがあったんだろう」と説明。和田打撃コーチは「(第2打席で)明らかにスイングが変わったし、直前に打ったファウルで本来の形に戻ったなと思った。これからもやってくれると思う」と、先発復帰3戦目でマルチ安打を記録した金本の復調に太鼓判を押した。

 金本の一振りから息を吹き返した打線は、終盤の3イニングで11得点の猛攻。今季リーグトップとなる26度目の逆転勝利で、再び首位巨人に0・5差と接近した。「首位とか2位とかじゃなく、とにかく1つでも多く貯金を作って後半戦に臨みたい」。真弓監督はしっかり手綱を締めたが、信頼を置く男の一打で逆転劇を収めたチームの力には、確信を得ているに違いない。【石田泰隆】

 [2010年7月19日8時56分

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