<横浜8-7巨人>◇18日◇横浜

 打球の行方を確認する必要はなかった。横浜ブレット・ハーパー内野手(28)は両手を大きく広げて、走りだした。「打った瞬間に行ったと思った。自分のゾーンに入ってくる球を思い切り振った」。3点を追う9回裏1死満塁だった。最高の場面で、最高の仕事をした。推定年俸3億円クルーンの外角への150キロ高速スライダーを、これでもかと振り抜いた。白球は横浜ファンの待つ右翼席に飛び込んだ。逆転サヨナラ満塁弾。今季3度目の大入りとなった横浜スタジアムが、地鳴りのような大歓声に包まれた。

 約1カ月前に入団テストを受けた“雑草外国人”が横浜を救った。11試合目で5本目の本塁打。「興奮している」とお立ち台では震えが止まらなかった。年俸は出場試合数に応じた出来高払いで最高1000万円(金額は推定)。父はワールドシリーズ優勝捕手だったが、自身は10年間をマイナーですごした。以前から日本行きを熱望していたが今年、米独立リーグのランカスターで元横浜の仁志敏久氏とプレーし、思いは強くなった。「彼から日本の野球のことをいろいろと聞いた」。試合後、テレビ解説に訪れていた仁志氏と抱擁を交わし「ニシサン、アリガトウ」とたどたどしい日本語でお礼を言った。

 193センチ、112キロのハーパーの劇的な逆転満塁サヨナラ弾で、横浜は08年5月以来となる巨人戦カード勝ち越し。「本当に思いもよらぬ結末。巨人に勝ち越しは2年ぶり?

 ハッ、ハッ、ハッー」。試合後の尾花監督も笑いが止まらない。この日の夜は横浜港の花火大会。横浜スタジアムの空に、ひと足早い大きな花火が上がった。【鈴木良一】

 [2010年7月19日9時8分

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