V奪回への勝負手だ。阪神藤川球児投手(30)が25日、3者連続三振の離れ業を演じたオールスター第1戦(福岡ヤフー)は、真っすぐの球威を徹底的に追求した「球宴用フォーム」で投げたことを明かした。従来より重心とリリースポイントを低くし、体の粘りを効かせたもの。体への負担が大きく、あくまで球宴限定のフォームだが、シーズン終盤の勝負どころになれば解禁するかも !?

 伝説の三振劇には秘密があった。23日の球宴第1戦。球児は全セ3点リードの9回に登板し、ロッテ里崎、西武片岡、中島をオール直球16球で3者連続三振に仕留めた。いつも以上にホップする150キロ超を連発。実はシーズン中とは違うフォームで投げていた。

 藤川

 そうそう。オールスターだからね。直球を投げるためだけのフォーム。

 2年ぶりにファン投票で選ばれ、3者三振を予告して臨んだお祭り舞台。全国の野球ファンに喜んでもらうため、球宴限定で「火の玉ストレート」をパワーアップさせた。重心、リリースポイントを低くし、より体に粘りを効かしたフォーム。より長い球持ちから、威力のある直球を次々に投げ込んだ。バットに当てられたのは1球だけ。付け入るスキを与えなかった。

 ただ、限定フォームにはメリットだけでなく、デメリットもあるという。「体の負担が大きい」。事実、3者連続三振を奪った翌24日の球宴第2戦(新潟)試合前練習ではキャッチボールを行わずにロッカールームに引き上げた。「今日はやめとくか、と言われて休ませてもらった」。体へのダメージを考慮して連投を避けていた。

 それだけに、連戦が続くシーズンで、このフォームを使用することは簡単ではない。「(シーズンの残り)50何試合でつぶれてもいけない。自分のフォームも崩したくない」。あくまで球宴限定というスタンスだが、あまりに威力十分の「火の玉ストレート」を眠らせておくのは惜しい。

 シーズンでもこのフォームで投げることがあるのか?

 そう問われた球児は「まだ分からない」と答えた。ダメージを考え基本的には封印する形になるが、シーズン終盤の土壇場、勝負どころになれば勝負手の封印を解く可能性もゼロではない。少なくとも、他球団の脅威となる武器がまた1つ増えたことは間違いない。

 明日27日横浜戦(甲子園)からは、いよいよ後半戦59試合がスタートする。この日は新潟から帰阪して静養。「まだ60試合近くあるんで、普通にやれたら」。強力な武器を懐に潜め、虎の守護神が再び猛スピードで走りだす。

 [2010年7月26日12時20分

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