<楽天8-3ソフトバンク>◇26日◇Kスタ宮城

 チーム3冠王に輝いたソフトバンク多村仁志外野手(33)が、16年目で初となるリーグ制覇に喜びを爆発させた。自己最多となる140試合に出場し打率3割2分4厘、27本塁打、89打点。王貞治会長(70)に才能を認められ移籍してから4年目、勝負強い打撃で7年ぶりVに大きく貢献し、MVP候補の最有力となった。

 普段はクールな男が、満面の笑みで初めてのVを喜んだ。「1年を通して試合に出続けて、貢献することができてうれしい」。チーム3冠王の多村が、強力打線をけん引しリーグ制覇をもたらした。

 今季最終打席も、今季の活躍を象徴するようにヒットで締めた。8回1死一塁での第4打席。楽天2番手青山の外角スライダーを逆らわず、中前へ運んだ。直後にペタジーニが適時打。常々「自分はホームラン打者じゃない」と話すスラッガーが、シーズンを通して見せた「つなぐ打撃」を最後まで貫いた。つなぐ場面ではつなぎ、返す場面では返す。打率、本塁打、打点はすべてチームトップ。勝負強い打撃でVに貢献し、MVP最有力候補となった。

 最高のシーズンとなった。高い身体能力を持ちながら、昨季まで15年間で100試合以上の出場は3度。度重なる故障に苦しみ、本来の力を十分に発揮できていなかった。昨オフには「精神的に弱すぎたなあと思う。野球は9割がメンタル」と、メンタルトレーニングを取り入れた。実は、現在もTFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷で、左手首を痛めている。メンタルの強化に踏み出したことが、シーズンを通してのベストパフォーマンスの発揮につながった。

 尊敬する人へ、ようやく恩返しができた。WBCでともに戦った王会長に才能をほれ込まれ、06年オフに横浜から移籍。「王会長が呼んでくれて4年目になるけど、ようやく恩返しができてうれしい」。横浜に愛する家族を残しての単身赴任生活も、同じく4年目。ナイター後でも2時間近くかけてマッサージなどで体をケアするため、ホテルの部屋で夕食を済ませることも少なくない。家族との生活、そして自身の体を犠牲にしてまでつかんだ初めての歓喜。孤高のスラッガー多村に、野球の神様がほほ笑んだ。【倉成孝史】

 [2010年9月27日11時9分

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