<日本シリーズ:中日7-8ロッテ>◇第7戦◇7日◇ナゴヤドーム

 落合中日が力尽きた。1点を追う9回に追いついたが、延長12回に決勝点を奪われた。リーグ2位から日本一となった07年から3年。悲願の完全制覇を目指したが、あと1歩のところで古巣ロッテに阻まれた。来季8年目を迎える落合博満監督(56)は試合後に雪辱を誓った。

 落合監督は敗戦が決まった瞬間、ベンチを立ちあがると足早にベンチ裏へ姿を消した。悔しさからか、相手の胴上げも、インタビューを見ることも、聞くこともしなかった。再びグラウンドに姿を現したのは表彰式が始まる寸前だった。敗戦から約40分後。「だれも責めないよ。よくこの1年間、やったと思う。勝負事に勝ち負けはつきもの。その責任を一番感じるのは監督。他のだれのせいでもない」と、さばさばと話した。

 最後までセ王者の意地は見せた。1点を追う土壇場の9回、和田の三塁打と、ブランコの犠飛で追いついた。前日6日のシリーズ史上最長5時間43分死闘をほうふつとさせる粘りで2試合連続延長戦に持ち込んだ。だが、9回から登板した浅尾がシーズン中に1度もなかった4イニング目に突入した延長12回に力尽きた。シリーズを通して守りの野球ができたのは3試合のみ。セ・リーグでは最強と言われた投手力がロッテ打線に屈した。「課題はいっぱいある。それを1つずつつぶしていかないと。セ・リーグでは野球になっても、この舞台で勝つには何かが足りない。それを探さないとな。よくここまできたが、ねじ伏せるような強さはない」。

 投手力を武器に負けない野球はできた。だが、完全制覇への課題はやはり打線の強化だろう。「こっちは明日からストーブリーグに突入だ」。総括の中で、落合監督は早くも補強を含めた来季への課題を頭の中で描いていた。

 07年11月1日、日本一となった。だが、試合後、皆が53年ぶりの快挙に酔う中で1人、なぜか泣けない自分に気づいた。「オレだってうれしいよ。うれしいんだけどな…。心のどこかに悔しさがあるんだ。リーグ2位だったってことがどこかに引っかかってる。やっぱり、優勝しなきゃだめだな!」。

 あの誓いから3年。リーグ優勝は果たしたものの、今度はシリーズの壁を破れなかった。立ちはだかったのはくしくも古巣ロッテでともに戦った後輩・西村監督。長い戦いの果てにまた心のとげが1本増えた。悔しさを伴うその痛みが、名将を再び来季の戦場へと向かわせる。【鈴木忠平】

 [2010年11月8日8時33分

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