<オープン戦:中日6-2ヤクルト>◇9日◇小牧

 完全復活弾だ!

 中日井端弘和内野手(35)がヤクルト戦で左翼へ2ランを放った。09年8月15日ヤクルト戦(ナゴヤドーム)以来、571日ぶりの1発。昨季は目の異常などで53試合出場に終わったキーマンが、キャンプからのハイペース調整で巻き返しのアーチ。猛打賞の1番荒木雅博内野手(33)とのアライバコンビが完全に仕上がった。

 復活にかける取り組みへのご褒美なのだろう。狭い球場も、強い風も味方につけた。3回、実に571日ぶりとなる本塁打で井端が復活ののろしをあげた。先頭荒木が中前打で出塁すると、左腕中沢の2球目、変化球に反応。少し泳ぎ気味だったが、体をうまく回転させてバットで拾った。角度をつけ風に乗せると、打球は左翼席で弾んだ。

 小牧球場は両翼92メートル。風の影響を受けない広いナゴヤドームなら本塁打にはならなかったはずだ。

 井端

 風ですね。風です。

 誇り高き男は素っ気ないコメントを残した。ただ左翼への一撃は、キャンプから取り組んできた成果だ。沖縄・北谷では代名詞でもある右打ちにこだわらず「引っ張る」と、打球方向も大胆に若返らせる取り組みを続けてきた。左翼へのオープン戦1号は、まさに“1発回答”だった。

 オレ竜の象徴的存在だが、昨季は目の異常などキャンプから苦しみ抜いた。二塁の定位置で堂上直の台頭を許した。周囲は球団史上初のリーグ連覇を狙う11年の話題の1つとして、二塁の井端VS堂上直の「レギュラー争い」に注目した。

 ただ、井端は競争に興味を示したことは1度もない。同じ土俵で語るな-、と言いたかったのかもしれないが、グッとこらえて行動で示し続けている。早出、居残りと圧倒的な練習をこなし完走したキャンプ中、争いの構図と練習量との関係をこう説明したことがある。

 井端

 自分が練習したいと思ったから、やるだけ。それだけです。

 向き合っているのは「去年はまったく野球をしていない」という自分自身。相手は関係ない。堂上直が右鎖骨の打撲で一時離脱しても心境に変化なし。この時期の1発も喜ぶべき要素ではないようだ。

 初回には三遊間に内野安打も放った。前日の右前打を引き合いに出した解説は、職人そのものだった。

 井端

 昨日はセカンドが(二塁側に)寄っていたから右に打った。今日は逆。空いている方に打てばいい。

 3打席目、アウトになった右飛を最も内容があると言い切るなど、感覚もやはり超一流。完全復活を高らかに告げる開幕まで、背番号6はペースを落とさず突っ走る。【八反誠】