<巨人1-8横浜>◇10日◇上毛敷島

 横浜が再び勢いを取り戻してきた。先発したプロ2年目の左腕、真下貴之投手(20)が巨人を5回1失点に抑えると、打線も巨人の開幕投手東野を打ち込んで快勝。真下はプロ初勝利をマークした。6日阪神戦から4連勝で、最下位からも脱出。尾花高夫監督(53)は就任2年目で初の4連勝だ。一方、東野は開幕戦勝利以降、白星から遠ざかっており、右のエースの不調に原監督も頭が痛い。

 ウイニングボールを受け取った横浜真下は、左手で大事そうに持ちながら、尾花監督、ナインと握手を繰り返した。昨季プロ入り初登板初先発で対戦した巨人からの初勝利。4度目のチャンスでつかんだ白星に、「相手はどこであっても本当にうれしいですし、ほっとしています」と、初々しい笑顔を見せた。

 武器である大きなカーブと直球の緩急をたくみに使い、巨人打線を翻弄(ほんろう)した。初回2死一塁で打席には、昨季の対戦で2本塁打を浴びているラミレス。初球からカーブを3球続けて1ボール2ストライクと追い込むと、「絶対インコースで三振をとってやろうと思っていた」という言葉通り、最後は内角への136キロの直球で見逃し三振に切って取った。波に乗った左腕は、持ち前の強気な投球もさえ、5回までに7奪三振。長野のソロ本塁打による1失点に抑えてみせた。

 感謝のマウンドだった。開幕ローテーションをつかんだ2年目の今季だったが、急性虫垂炎で4月23日に登録抹消。「入院してチームに迷惑をかけたのに、先発で投げさせていただけるだけでうれしくて」と、必死に腕を振った。1軍復帰戦となった4日広島戦は初めてリリーフで登板し、ブルペンの苦労も知った。それだけにマウンドを降りた6回以降も「安心して見ていられました」と無失点リレーで勝ち星を運んでくれた3人の中継ぎ陣に、ベンチから声援を送り続けた。

 三浦、大家、清水というベテラン勢が2軍調整中。ここまで先発の勝ち星はわずか3つという苦しい台所事情の中での価値ある1勝。尾花監督も「1つ勝つと自信が出てくる。左投手なのでずっとローテーションで回ってくれれば」と若手の台頭を喜びながらも、「いつまでもチャンスをもらっているようではダメ。奪って居座れるのが大事」と、さらなる成長を求めた。

 ウイニングボールは母静恵さんに渡すつもりだ。「母の日に何も贈っていなかったので、今日勝ってプレゼントしようと思っていた」。家族への感謝も忘れない20歳の左腕は、「次は7回以上、チームの勝利のために投げたい」と力を込めた。2年ぶりの4連勝、そして最下位脱出を呼び込んだ若い力が、好調のチームをさらに勢いに乗せていく。【佐竹実】