<阪神11-4広島>◇12日◇甲子園
飛ばない統一球も、悪天候も跳ね返した。阪神金本知憲外野手(43)が、今季甲子園1号で最下位脱出を導いた。広島戦3回の今季65打席目。豪雨を切り裂き、篠田から豪快な右越え2号ソロをたたき込んだ。連続試合出場も止まり、万全でない右肩を抱えながらのプレーが続くが、やるときはやるのがアニキです。
この弾道が見たかった。この光景を待っていた。金本の打球はそぼ降る雨を突き破るように右翼ポール際に一直線。着弾を待たずに大歓声がわき起こる。甲子園33打席目で飛び出した初アーチ。今季2号を放った背番号6は、雨と大声援のシャワーを浴びながらベースを回った。
結果で示した。試合前、打撃練習を見守った片岡打撃コーチが言った。「日に日によくなっている。あとは試合でそれをできるか」。恒例の練習開始1時間前から行う早出特打。フォロースルーが大きく、高い。迫力が違った。何十本、打球を打っても変わらない。棘(きょく)上筋断裂の右肩をかばうそぶりは一切なかった。打率1割台の男には見えない。状態はグングン上がっていた。
試合を1発で落ち着かせた。実質のトドメだった。2回までに6点を奪いながら先発下柳が不安定。直前に1点を返された。その裏の先頭。いきなりマウンドの土入れのため試合が中断。ベンチ前で待たされたが、集中力は落ちない。1ボール2ストライクから甘く入った133キロを仕留めた。
初回の左翼守備で雨にぬれた芝生に足を滑らせ、左前打を二塁打にした。今季初失策が失点につながった。山脇外野守備コーチは「本塁打が出てよかったんちゃうかな」と、心の傷をバットで癒やせたことを喜んだ。
チームにとっても大きい一打だ。開幕からほぼ不動のオーダーで戦ってきた。金本は先発時は必ず「6番」。打てなくても変わらなかった。真弓監督が言う。「変えてうまくいくならナンボでも変えている。我慢も必要」。開幕から出遅れた金本だがベンチの信念に応えようとしている。
試合前練習で、めずらしい光景があった。通常2カ所で打つフリー打撃で、1カ所だけ設営。打撃投手は左腕だけ。今季2試合で計3得点と苦手にしていた篠田打倒への並々ならぬ執念だった。金本もそこで快音を鳴らして試合に入った。そして篠田を打った。
金本は笑みを浮かべてロッカールームに消えた。マンモス甲子園に描いた初アーチが持つ意味は「逆襲のノロシ」に違いない。【柏原誠】



