交流戦だけど予告です。今日20日の楽天-ヤクルト1回戦(Kスタ宮城)に、ヤクルト由規投手(21)と楽天田中将大投手(22)が先発する。ヤクルト小川淳司(53)、楽天星野仙一(64)両監督が明言した。仙台市出身の由規は、東日本大震災以来、初の地元凱旋(がいせん)登板。2人は過去に2度、先発として投げ合い、ともに投手戦を演出し、1勝1敗の五分だ。チームの勝利と自身の直接対決勝ち越しを懸け、若き両右腕が激突する。

 仙台市出身のヤクルト由規が、使命を感じて故郷の先発マウンドに立つ。当初のローテーションでは登板予定はなかったが、10日からの北陸シリーズが2試合連続で雨天中止になったことで巡ってきた。「自分の中でも持っているなという風に思っているし、勝たないといけない。使命と思って気持ちをつくってきた」と高ぶらせた。

 楽天星野監督が田中の先発を公言したと伝え聞いた小川監督は、言葉を選びながら被災地の気持ちを思いやった。「由規とマー君の投げ合いで、少しでも興味を持っていただければ。少しでもそういう時間を持ってくれたら」と応えた。

 由規はこの日、遠征先の札幌から、東日本大震災後初めて地元に戻ってきた。仙台空港からの道のりは横転する車や、重なり合う車の数々があった。「今までテレビでしか見てなかったけど、想像以上でちょっと言葉が出なかったです。通ったことがある道だし、変わり果ててしまったと感じました」。

 登板日に合わせて、仙台育英でバッテリーを組んでいた故斎藤泉さん(享年22)の両親を招待する。「少しでも笑顔を取り戻してもらえるように」とかみしめた。遺体が発見されたのは、震災から1カ月半以上がたった4月27日だった。その日の巨人戦でつかんだウイニングボールは、今回の登板後に石巻市の実家に届けるつもりでいる。

 これも天命なのか。3年連続で、投げ合う相手は過去1勝1敗の楽天田中に決まった。今は仙台市をホームにする楽天の顔になった右腕だ。「当日になったら意識せざるを得ない。先にマウンドを降りないようにしたい」。先発として、常に掲げる目標は完投、完封。高校時代から慣れ親しんだ場所に、最後まで立ち続ける決意で勝負に向かう。【前田祐輔】